｢困ったことに遼成さんとも笹原さんとも裕貴さんとも二十年来の腐れ縁です。皆さん、事あるごとに兄貴の嫁になれとしつこくて。当時はいかに三人から逃げるか、そればかり考えていました」 悪戯大好きのたいくんとここちゃんがさっそく悪戯をはじめた。 ｢待って！」 ｢せっかく畳んだのに」 むんずとタオルを掴みときゃきゃと歓声をあげながらぽんぽんと投げはじめた。 ふたりは紗智さんと那和さんに遊んでもらったみたいで、そのうちタオルで顔を隠して、いない、いない、ばぁ～～遊びをはじめた。 構ってちゃんは遥琉似かな。 甘えん坊も遥琉似かな。 さみしがりやも遥琉似かな。 出来ることなら焼きもちやきだけは遥琉に似ないでほしいな。 そんなことを考えながら畳んだ洗濯物を片付けようと立ち上がったら、 ｢おっと」 噂をすれば影。遥琉が目の前にいたから腰を抜かすくらい驚いた。 ｢ごめんな、前をよく見てなかった。大丈夫か？」 畳のうえに散らばった洗濯物をすぐに拾い上げてくれた。 ｢バーバもま～～ぜて」 遥琉がにこにこ笑いながら紗智さんと那和さんの隣に腰を下ろした。 彼がヤクザとは無縁のごく普通のひとだったら、私は別の人生を歩んでいた。柚原さんや未知さんに出会うこともなかったのかも知れない。 私と遥琉が出会ったのは六月二十日。 その十日後、私と千里の運命を変える日が訪れた。