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第8話

アルバイトを終え、近所のスーパーに立ち寄り半額に値引きされた惣菜を購入し、急いで家に帰ったら、玄関のドアが半開きになっていた。よく見ると鍵が壊されていてチェーンが切られてあった。 それを見たその瞬間、全身から血の気がさぁーと引いた。 「千里!」 靴を脱ぎ捨て家のなかに飛び込んだ。台所の電気を付けると冷蔵庫も、シンクの下も、食器棚も全部開けられ、床のうえには物が散乱し足の踏み場もなかった。 頭の中が真っ白になった。 あの人が来たんだ。 母親という名前の悪魔が……。 千里、どうか無事でいて。 六畳一間の狭い部屋の中も台所同様にしっちゃかめっちゃかに散らかされていた。煙草とアルコールが混ざった匂いにむせりながら窓を開け、押入をガラッと開けた。そこに千里の姿はなかった。 「千里!千里!」 名前を呼びながらお風呂場と猫の額ほどしかないベランダを探したけれど、どこにもいなかった。 畳のうえにくしゃくしゃになったからっぽの給料袋が無造作に捨ててあった。 食物科は一日休めば単位が取れなくなってしまう。実習もあるし勉強もしないといけない。だからアルバイトは週末しか出来ないのに。 このときほどあの人を憎んだことはない。

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