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第17話
「蒼生さん毎日こうなの?」
「う~ん。どうだろう」
クスッとからかうように笑われた。
「優璃なにやってんだ。早くしないと遅刻するぞ」
玄関から遥琉の声が飛んできた。
彼の寝癖をドライヤーで乾かしながら直してあげて、シャツを着せて、ネクタイを結んであげて、最後にブレザーを羽織らせて。汗だくになりながら用意させていたから、当然自分の準備は後回しになる。
「もう誰のせいだと思ってんだよ」
「誰って兄貴しかないじゃん。本人はまったく気付いてないけどね。橘先輩持つよ」
笑いながら蒼生さんが千里の着替えが入った紙袋を持ってくれた。
「忘れ物ない?」
「うん、多分」
玄関に急いで行くと彼が昆さんと立ち話しをしていて茶色い封筒を受け取っていた。
「これか?俺の親父が今後二度と優璃と千里に近付かないようにきみの母親に誓約書を書かせた。あとは親権放棄に関する書類だ」
彼に渡された。
「ほら乗って。遅刻するぞ」
昆さんに急かされ彼と一緒に後部座席に乗り込んだ。蒼生さんは助手席に乗り込んだ。
「遥琉、あの人なにか言ってた?」
「さぁな。子どものことより、どうやったら実刑を免れるか、不起訴に持っていけるか、そればかり考えているらしい」
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