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第18話
ホームルームが終わり帰る準備をしようと席を立ったら、
「優璃帰るぞ」
ガラッと扉が開いて遥琉が顔を出した。
「優璃?」
「へぇ~橘くんの名前、優璃っていうんだ」
クラスが一瞬どよめいた。
「遥琉」慌てて彼に駆け寄った。
「頼むから学校のなかでは名前で呼ばないで」
「なんで?」
「何でって……」
そりゃあ恥ずかしいからに決まってる。言い出せずにいたら、
「今さら恥ずかしがってどうする」
くすっと笑われてしまった。
「恥ずかしがってなんかいない」
「そうか?優璃は思ったことがすぐ顔に出るから分かりやすいんだ。帰るぞ」
遥琉に腕を掴まれそのまま昇降口に向かった。すれ違いざま他の生徒がぎくっとして振り返り、二度三度見された。これじゃあ恥の上塗りだ。穴があったら入りたいとはまさにこのことをいうんだろうな。
半分嬉しいけど、半分恥ずかしい。
千里のもとにまっすぐに向かっていると思っていたら違っていた。
「喫茶店……プリモーロ?」
「マスターは元ヤクザの男だ。今はカタギだ。きみと千里の後見人を快く引き受けてくれた」
「遥琉待って」
さっさと行ってしまった彼のあとを慌てて追い掛けた。
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