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第20話

「遥琉はこう見えても子どもが大好きなんだ。保育園の夏祭りとかバザーのボランティアなんかよくやっていたんだ」 「こう見えても……って、それ酷くないですか?」 「見た目はヤンキーだろう。間違っていないはずだ。遥琉、悪いが冷蔵庫から白い箱を持ってきてくれないか?」 席を立った彼と入れ違いに、茨木さんがミルクたっぷりのカフェオレを運んできてくれた。 「見た目はあぁだが、中身は五歳児だ。だからかな、子どもの方から近寄ってくる。遥琉は子どもが大好きなんだ」 「見てて分かります。彼、誰にでも優しいから。困っている人がいれば必ず声を掛けるし、この前なんか迷子の男の子を保護して泣きじゃくる男の子をあやしながら交番まで連れていったし」 「遥琉は優しすぎるんだ。だからヤクザに向いていない。それは遥琉自身がよく分かっていることだ。私も昆も彼にはカタギとして生きて欲しい。ごく普通の人生を歩んで欲しいと願っている。橘、遥琉を頼むな」 「はい」姿勢をただし背中をぴんと伸ばした。 「茨木さん、これですか?」 彼が白い箱を運んできた。 「そうそれ。中身はアップルパイだ。今回のはなかなか上手く出来たんだ。妹さんに渡してくれ」 「ありがとうございます。千里、甘いものが好きだから喜びます」 「そうか、それなら良かった」 茨木さんは二十年前もいまも、私たちのそばで、私たちを静かに見守ってくれている。 茨木さんの孫の未知さんは当時二歳。 まさか遥琉と未知さんが結ばれるとは。 私も茨木さんも遥琉本人も誰も予想していなかった。

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