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第22話

「お巡りさんも生身の人間だ。きみの母親の交際相手の男に弱みを握られ脅されていた。だから、言いなりになるしかなかったみたいだ」 「面目ない」 刑事さんが頭を垂れた。 「未成年者だと知りながら掲示板で知り合った少女に金を渡し春買していた。その金の出所は拾得物で交番に届けられた財布に入っていたカードだ。カードを悪用し、不正に金を引き出していた」 「どーせ、その未成年の女も共犯だろうよ。きみの母親の交際相手の男は、ある暴力団の幹部の弟だ」 「そんな……」 はじめからすべて仕組まれていたんだ。 怒りが沸々と込み上げてきた。 「優璃、可愛い顔が台無しだ。眉間に皺を寄せるな。スマイルだ」 頬っぺたを指でツンツンされた。 「ちょっと遥琉!」 ひと言言い返そうとしたら、 「なんか美味しそうな匂いがする。なんの匂い?」 千里の声が聞こえてきてドキッとした。 「昆、退散するぞ」 刑事さんが昆さんに声を掛け廊下へと出ていった。気を遣ってくれたんだと思う。あの男と同世代だから、千里に嫌なことを思い出させないように刑事さんなりに配慮してくれたんだと思う。

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