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第25話
夕方の混雑時。お客さんはひっきりなしに目の前を通りすぎていく。なにもこんな人目のつくところでこれ見よがしに土下座しなくてもいいのに。嫌がらせとしか思えない。
みな、なるべく目を合わせないように視線を下に向けたり、無視、あるいは気付かないふりをしたり、横目でちらっと見て足早に駐車場や駐輪場に向かっていた。
「優璃帰ろう」
彼に腕を引っ張られた。
「ちょっと待て!」
土下座していたあの人がむくと上体を起こすと、今度は僕の足にしがみついてきた。
「優璃、父さんを見捨てる気か?今まで育ててやった恩も忘れて。酷いヤツだ」
「離してください……痛っ!」
このまま足をへし折られるんじゃないか、胸に激しい恐怖が湧いた。
「おっさん、優璃はあんたのじゃない。俺のだ。離せ」
彼がぶら下げていた買い物袋を下に置こうとしたまさにその時、
「何してんだ」
さっき病院で会った刑事さんが人ごみの中から姿を現したものだから、腰を抜かすくらい驚いた。
「まだ父親じゃないだろう。ハッタリもいい加減にしろ。無免許運転と道路交通法違反の現行犯でお縄になりたくないならさっさと失せろ!」
刑事さんが声を張り上げるとあの人は、
「これで済むなと思うなよ!覚えておけ!」
ドスのきいた捨て台詞とともに人ごみのなかに消えていった。
「怖かった……」
膝から崩れるようにその場に倒れ込むと、彼が片手でしっかりと受け止めてくれた。
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