今僕がいる布団ははじめて見る大きなもので、信じられないほどふかふかしている。 いつも眠っていた布団とは天ほどの差があるといっても過言ではない。僕や千里が使っていた布団はホームセンターの特売品の綿布団。 温かくてすごく心地がいいのに、それが妙に落ち着かなくて。何度も寝返りを打っていたら、 「明日の朝起きれなくて、遅刻するぞ」 戸がすっと開いて彼が顔を出した。 「こんなにもふかふかな布団で寝るのがはじめてだから。なんか緊張しちゃって」 「きみって本当に面白い子だね」 彼がクスクスと笑い出した。 「優璃が寝れるように添い寝してやる」 「いいよ、大丈夫……だよ」 慌てて首を横に振った。 好きなひとと同じ布団で寝たら、ドキドキして逆に寝れないよ。 なにかも、はじめてなんだよ。恋も、ドキドキも、一緒の布団で寝るのも。 「遠慮するなって」 「遠慮してない」 蒼生さんを起こさないように足音を忍ばせて彼が四つん這いになり畳の上を這ってきた。