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第39話
それから二週間後。
今日は千里が退院する日だ。入院費は出世払いでいいからと、茨木さんと根岸さんが肩代わりしてくれた。
「昆さんすみません。遅くなってしまって」
玄関のドアを開けると、カレーの美味しそうな匂いがしてきた。
「お帰り。実習で疲れただろう。今夜は俺と蒼生特製のチキンカレーだ。早く手を洗ってこい」
「はい」
靴を脱いで家に上がると、長方形の真新しいテーブルが置かれてあった。
「収納するのに便利な折り畳み式だ。縣家からくすねてきた」
「黙って持ってきたら泥棒になります。早く返さないと」
「大丈夫だ」
昆さんがクスクスと笑いだした。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
千里が濡れた髪をタオルで拭きながら姿を現した。
「ピンクのモコモコのパジャマ、昆さんからの退院祝いなの。見て見て、これね、耳と尻尾が付いているんだよ可愛いでしょう」
くるっと一回転して見せてくれた。
「可愛いね」
いつもと変わらない千里の明るい笑顔を見ているうち僕までなんだか嬉しくなってきた。
良かったね千里。
みんながみんな悪い人ばかりじゃない。それを教えてくれた彼に感謝しないとね。
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