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第41話

「お願いだから出てきてよ」 僕がお風呂に入っている隙に、千里は押入れの中に入っていた荷物を全部外に出して、立て籠ってしまった。 「アタシ、ここで寝る」 「あのね千里。これはね、お兄ちゃんと千里が一緒に寝るようにって根岸さんがわざわざ新しい布団を準備してくれたんだよ」 「アタシとじゃなくて、遥琉お兄ちゃんとでしょう。アタシ、邪魔しないから、どーぞ、遥琉お兄ちゃんと一緒に寝てください」 千里の頑固さは誰に似たんだろう。 ほとほと困り果てていたら、 「ならこうしよう。四人一緒に寝よう」 「へ?」 思わず変な声が出てしまった。 「戸を全開して、布団を3つくっつけるんだよ。それならいいだろう。蒼生、もちろん協力してくれるよな?」 じろりと睨まれ、 「は、はい」 ギクッとして返事をすると、布団をすぐに敷き直してくれた。 「千里、もう隠れる必要はないんだ。きみに危害を加える者はここにいない。一緒に寝よう」 彼が根気よく千里に声を掛け続けた。三十分後、すっと静かに押入れの戸が開いた。

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