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第43話
「反対しない」
「えぇーなんで」
「だってお兄ちゃん、遥琉お兄ちゃんと一緒にいるときすごく幸せそうなんだもん。アタシがいるせいで足手まといになってるし、お兄ちゃんに迷惑ばっかかけてる。もっと勉強したり、友だちと遊んだりしたいのに、その日暮らすのが精一杯だったから……遥琉お兄ちゃん、蒼生お兄ちゃん、アタシたちを見付けてくれてありがとう。助けてくれてありがとう。もぅ、やだ。なんでアタシ泣いてんの」
千里が鼻をずずっと啜り、泣き顔を見せまいと布団を頭から被った。
「遥琉お兄ちゃん、お兄ちゃんの泣かせたらアタシ許さないからね」
「分かってるよ。絶対に幸せにする」
彼の手がすっと伸びてきて。千里の頭を布団の上からぽんぽんと撫でてくれた。
「あのね、千里。聞いて。お兄ちゃんね……」
「優璃、もう過去は振り返らないんだ。大事なのはこれからだ。千里の中学校のこともある。進学のこともある。それをみんなでどうするか考えよう」
「お、兄貴が珍しく真面目なこと言ってる」
「あのな蒼生、俺はいつも真面目だ」
「あれで真面目なんだ。へぇー」
彼の眉間に皺がどんどん寄っていくのを察したのか「兄貴お休み。寝る」蒼生さんも布団を頭から被った。
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