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第44話

校門の前に立っているだけなのに。まさに絵に描いたようなイケメンの彼。だから彼の周りには自然と女の子が集まってくる。唇をぎゅっと結び彼の前を素通りした。 「優璃、ちょっと待て。置いてくな」 カバンを肩に担ぎ彼が慌てて追い掛けてきた。 「もしかして怒ってる?」 「怒ってない」 「じゃあ聞くが、なんでそんなにツンツンしているんだよ」 「してない」 こんな態度じゃあ彼に嫌われる。頭では分かっているのにどうしていいか分らない。 まともに彼の顔を見ることが出来なくて俯くと、 「学園祭のクラスの出し物をなにするかって話しをしていたんだ。誤解を招くようなことをしてすまなかった。以後気を付けるから許して欲しい」 大きくて温かな手がそっと僕の手を握ってくれた。 心音が一気に跳ね上がり、顔から火が出そうになった。 「そういえば7日って優璃の誕生日だよな?」 「なんでそのことを知ってるの?」 千里の誕生日がいつか蒼生さんに聞かれたから、終戦記念日の日だとは教えたけど、自分のは誰にも教えていないはずなのに。 「食物科の女子が駅前のファーストフードによく集まってんだよ。おごるから、優璃の誕生日を調べてくれって頼んだんだ」 一瞬目の前が真っ暗になった。 恐るべしクラスの女子。だから根掘り葉掘りいろんなことを聞いてきたんだ。

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