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第48話
それから五分後。駐車場に大きな黒塗りの車が入ってきた。助手席から颯爽と下りてきたのは伊澤さんだった。
伊澤さんの顔を一目見るなり屈強な男たちの表情が一変した。
「おぅ、前島。久し振りだな」
「おやっさん、ご無沙汰してます」
伊澤さんに前島と呼ばれた、頬に傷のある男が煙草をくわえながら頭を下げた。
「橘兄妹は、龍一家の身内になったんだ。うろちょろすんな」
「橘兄妹は、親の借金のカタだ。そっちこそ好き勝手にしてもらっては困る」
「あ?」
運転手席から下りた根岸さんが目を吊り上げて前島という男を睨み付けた。
「なぁ、伊澤。橘兄妹の親権ってどうなっているんだっけ?」
「親からの虐待からふたりを守るため、俺の知り合いの弁護士がふたりの代理人になり、親権喪失の申立てを行った。家裁がどう判断するかだが、何事もなければふたりの後見人である茨木さんに親権が移る」
「だそうだ。前島、聞いてたか?」
「なんか言ったか?最近どうも耳が遠くてな」
前島という男がにたにたと笑いながら伊澤さんを見つめた。
「誰かと思ったら前島じゃねか」
そこへ黒いトレンチコートを着た長身の男がどこからともなく姿を現した。
その男の顔を見た瞬間、彼の表情が一変した。知り合いなのかな?怖い表情でじろりと睨み付けた。
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