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第50話

「真沙哉のことはあとでちゃんと説明する。優璃、何があってもこの手を絶対に離すなよ。俺も絶対に離さないから」 手をぎゅっと握られ、大きく頷きながらそっと握り返した。 「アツアツだな。千里も彼氏欲しくなったんじゃないか⁉」 「え⁉アタシ?」 茨木さんに唐突に聞かれた千里。なぜか顔を真っ赤にして照れていた。 「なんだ好きな子いるのか?」 「もぅ、やだぁ~」 図星だったみたいでますます頬が赤くなった。 「たく、暇人だな。他にやることないのか」 「あぁいう大人がいるから、まわりの人間が不幸になるんだ」 根岸さんと伊澤さんが肩を並べお店に入ってきた。 「根岸、店内は禁煙だぞ」 「そうだった」 伊澤さんは、根岸さんがくわえていた煙草を引き抜くと、上着の胸ポケットから携帯灰皿を取り出しそのなかに入れた。 「それとネクタイが曲がっている」 「そうか?気のせいだろう」 「気のせいじゃない。ほら、こっち向け」 携帯灰皿をポケットにしまうと、爪先立ちになり、根岸さんのネクタイをほどき、結び直した。 「身なりが綺麗な男ほど出世するっていうだろう。それに女にもモテる。いい人を見つけて悠仁《ゆうじ》のためにも早く再婚しろ」 「伊澤がそばにいて俺や悠仁の世話をしてくれるから、別にいいかな」 「あのな根岸……」 ふたりの会話をポカーンとして聞いていたら、 「ヤクザを取り締まる側であるマル暴のデカが、ヤクザの親子の面倒を甲斐甲斐しくみているんだ。根岸は色恋沙汰に疎いからな。伊澤の気持ちに気付くまであと20年はかかるぞ」 茨木さんが苦笑いを浮かべながら、淹れたてのコーヒーをふたつ準備した。

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