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第51話
喫茶店を出ると手嶌組の構成員が煙草をふかしながら僕たちを待ち構えていた。
「どんだけ待たせるんや!」
前島さんが怒り心頭の様子で車から下りてきた。
「なんだまだいたのか。暇だな」
根岸さんが後部座席のドアを開けてくれた。
「相手にするだけ無駄だ」
乗るように促された。
「ちょっと痛い!」
はじめ空耳だと思った。
あのひとがこんなところにいるわけない。でも……、
前島さんが髪を掴み無理矢理引き摺り下ろしたのは紛れもなくあのひと、僕と千里の母親だった。
「優璃、お願い。母さんを助けてよ」
媚びるような猫なで声に、千里が顔をひきつらせがたがたと震えはじめた。
「千里がどれだけ怖い思いをしたのか、あんたには分かるまい。自分たちが借りた金はちゃんと自分たちで返さないと駄目だろう。子どもに肩代わりさせるなど言語道断」
「うるさいな。他人が口を挟むことじゃないでしょう」
千里、僕、彼の順番で車に乗り込むと伊澤さんがドアが閉めてくれた。
「あんた、金に目がくらみ千里を伊縫に売り飛ばそうとしていただろう。人身売買は立派な犯罪だぞ。それでも母親か」
伊澤さんがあのひとをじろりと睨み付けた。
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