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第55話
「優璃は敏感だな」
「違う、くすぐったいだけ」
「は?」
彼の顔色が変わった。
「謝るから、ごめんなさい」
あちこち、それこそ全身くまなくこちょこちょされて身を捩り悶えた。
じゃれあっているうちに、彼とふと目とあった。
男の色香の漂う熱っぽい瞳で見つめられ、ぽっと身体がみるみる熱くなっていった。
「キス……したい。無理にとはいないが……」
奪おうと思えば強引に奪えるのに。
遥琉は昔から変なところが真面目で律儀な男だった。
そんな彼だからこそ僕は彼を好きになった。
一生そばにいて、彼を支える。添い遂げる。そう心に誓った。
返事するのがなんだか照れくさくて。
彼の背に腕を回し、そっと目を閉じた。
「優璃、愛してる」
抱き締め返され、そのままそっと口付けられた。
啄むような短いキスののち、しっとりと唇を覆われ、優しくそこをなぞられた。
「うっ……ん……」
抱き締めている腕に思わず力を込めてしまうと、何度目かのキスののち、唇か掠める距離で彼が小さく微笑んだ。
「優璃の唇は柔らかくて、甘くて、触れ心地がいい。それにいい香りがする」
掠れた声で囁かれ、頭がますますぼうっとした。ぐったりと彼の腕に身を委ねると、耳朶に熱い唇が触れてきた。
「唇だけじゃなく、きみを全部食べたいと言ったらどうする?」
情欲を露にした熱っぽい視線で見つめられ、顔から火が出そうになった。
アルバイトから帰ってきた蒼生さんがしばらくの間、固まっていたとは知るよしもなかった。
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