2 / 6

2

 ふと、涼の視線が裕太とぶつかった。突然の出来事に裕太の心臓がドキリと跳ね上がる。 「裕太、それ何?」  そう言いながら涼の手は裕太の方へと伸ばされていき、手に持っているカップを奪った。 「あっ、ちょっ……」  カップを持った涼の手が、彼の顔へと近付いていく。  次の瞬間には、涼は裕太のアイスレモネードを彼の飲んでいたストローに口を付けていた。 「っ……」  言葉にならない声を漏らし、裕太はその場で固まってしまった。  同時に気付いてしまった。涼に対して抱いていた感覚の正体に。  これは恋である。  今まで誰かを恋愛対象として好きになったことはない。けれども、甘くて酸っぱいようなこの感覚は、紛れもなくそうであると確信した。 「これ、なかなか美味いな」 「……だろ?」  必死に何とか取り繕い、裕太は全力の笑みを浮かべる。  嬉しそうな表情の涼はカップを戻すと、何事もなく再びハンバーガーを食べ進める。  楽しそうに食べている姿をもう直視できない。友達として見ることができない。けれども、関係を壊したくない。  初めて抱いた恋心が、こんなにも重く苦しいものとは思わなかった。 「あ、ちょっとトイレ行ってくる」  平静を装いながらその場を立ち去った裕太は、トイレの個室に籠もるなり一人静かに涙を流していたのであった。

ともだちにシェアしよう!