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ふと、涼の視線が裕太とぶつかった。突然の出来事に裕太の心臓がドキリと跳ね上がる。
「裕太、それ何?」
そう言いながら涼の手は裕太の方へと伸ばされていき、手に持っているカップを奪った。
「あっ、ちょっ……」
カップを持った涼の手が、彼の顔へと近付いていく。
次の瞬間には、涼は裕太のアイスレモネードを彼の飲んでいたストローに口を付けていた。
「っ……」
言葉にならない声を漏らし、裕太はその場で固まってしまった。
同時に気付いてしまった。涼に対して抱いていた感覚の正体に。
これは恋である。
今まで誰かを恋愛対象として好きになったことはない。けれども、甘くて酸っぱいようなこの感覚は、紛れもなくそうであると確信した。
「これ、なかなか美味いな」
「……だろ?」
必死に何とか取り繕い、裕太は全力の笑みを浮かべる。
嬉しそうな表情の涼はカップを戻すと、何事もなく再びハンバーガーを食べ進める。
楽しそうに食べている姿をもう直視できない。友達として見ることができない。けれども、関係を壊したくない。
初めて抱いた恋心が、こんなにも重く苦しいものとは思わなかった。
「あ、ちょっとトイレ行ってくる」
平静を装いながらその場を立ち去った裕太は、トイレの個室に籠もるなり一人静かに涙を流していたのであった。
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