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見慣れたショッピングモールの隅にあるバーガーショップは、昼どきを過ぎて若干落ち着きはじめていた。
「やっぱちょっとの間じゃ変わんねーか」
ウキウキとした涼は、店に入るなりすぐに注文口へと向かった。大学生らしく、少し落ち着いた格好をしてはいるものの、中身はまだ少年らしさを残していた。
涼らしいな、と後ろ姿を眺めながら並ぶと、すぐに裕太の順番が回ってきた。
「えっと店内で……アイスレモネードをお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
あのときと同じメニューを裕太は選んでいた。それ以外にも選択肢はたくさんあるのに、どうしてもアイスレモネードの文字から目を逸らせなかった。
ストロー越しに間接キスをしたあの日から、裕太は必ずアイスレモネードを頼んでいた。
何が起こるわけでもないただの注文。それでも懲りずにずっと続けていたのであった。
「おまたせいたしました」
会計を済ませて席へと向かおうとすると、隣には涼の姿があった。
「あっち行こうぜ」
少し離れた端の席。またあそこへ行くのか。
人があまり通らないところなので、落ち着ける場所ではあるが、涼とは二人きりになりたくなかった。
「よいしょっと」
涼が奥の方へと腰掛け、裕太は向かい合わせで座る。
「なんだよ、飲み物だけか」
「涼みたいな大食漢じゃないからな」
皮肉めいたことを口にし、裕太はストローに口を付けて喉を潤す。
甘みの中に広がる酸味が、昔の記憶を呼び起こそうとしている。
涼はただの友達、これまでもこれからもそうであり続ける。
そう心の中で唱える。
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