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「裕太ってさ」
「……ん?」
「相変わらずアイスレモネード頼むよな」
「……好きだからな」
本当は、涼のことが。
その一言を口に出せたらどんなに楽だろうか。
再び飲もうとしたところで、不意に涼の手が裕太へと伸ばされてきた。
「そんなに飲み続けられるならさ、俺にもあじみさせろよ」
そう言って涼の手は裕太へとどんどん近付いていく。
だが、裕太が予想していたカップからは離れていき、顔へと近付いていく。
そっと顎を掴まれたと気付いたときには、目の前まで涼の顔が迫っていた。
あまりにも突然の距離感に、裕太はされるがままになっていた。
こんな至近距離でされることは一体。
裕太がぎゅっと目を閉じると同時に、唇には柔らかい感触があった。
涼の唇に違いない。
しばらくするとそっと離れていき、顎を掴む手の感覚もなくなっていた。
「んっ……えっ?」
目を開けるとそこには、ニヤリと微笑む涼の姿があった。
「裕太の好きってさ、こっちだろ? ずっと見られてたら俺だって気付くよ」
「えっと、その……」
裕太は思わず視線を逸らす。事実ではあるとはいえ、涼に気付かれているとは思いもしなかった。
ねぇ、ともう一度涼に問われ、裕太は小さくコクリと頷いた。
これからどんな罵倒をされるのだろう。裕太は下を向き続けることしかできなかった。
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