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第15話◇
「……もも。……もしもし?」
…………もしもしを、噛むとか。
…………無くないか? オレ。
『涼、まだ?』
「……い、今、シャワー、でたとこ」
『遅い。待てない。早く』
「……髪、乾かしてから、行く」
「5分な」
ぷち、と電話、切れた。
うう。なんかものすごく、蒼紫っぽい。
仕方なく、ドライヤーを引っ張り出して、髪を乾かす。
5分は、多分もう経った。
乾いてしまったので、仕方なく、ドライヤーを切って、コンセントを抜いて片づける。バスタオルまで全部洗濯機につっこんで、明日の朝にセットする。
寝る準備……。
歯磨き……。
歯磨き粉を付けて、長々磨く。
……磨き終わっちゃった。
「あ、――――……学校の用意しよ……」
明日の朝でも良いのに、ついつい机の前で明日の用意をしていると。
また電話がきてしまう。
「……もし、もし……」
『……涼。迎えに行くけど』
「だ、大丈夫、すぐ、行くから」
『……1分な』
ぷち。切れる。
……1分、て。
……もうだめだ。いくしかない。
は、と息をついて。
逃げたい気分に何だか襲われながら。
自分の部屋を出て、鍵を掛ける。
蒼紫の部屋に近づいた時。蒼紫の部屋が開いた。
「――――……迎え行くとこだった」
焦れたような蒼紫の顔。
「すげー待ったけど。シャワー浴びただけ?」
「……歯磨きとドライヤーと……明日の学校の用意は途中だけど……」
「来いよ」
手首を掴まれて。
蒼紫の部屋に連れ込まれる。
鍵を掛けた蒼紫に、ドアに背を押し付けられて、囲われる。
「……焦らしてんの?」
「……っちが、う」
プルプルプル。
「何だよ、学校の用意って。すげえ待ってたのに」
言いながら、蒼紫の整った顔が、めちゃくちゃ近づいてくる。
焦って何か言う間もなく、唇が重なった。
「……っんっ」
深く重なって。
舌が触れてくる。
「あお――――……っ」
呼びかけた名前、塞がれて、キスされる。
唇が少し離れて、はぁと息をついたら。頬にちゅ、とキスされた。
「涼、好き、だ」
「――――……」
なんか……部屋で色々考えてたけど――――……。
これは――――…… ほんとに……。
ほんとに、オレの事――――……好き、なの、かな……。
「涼がオレを好きなのって――――……本当?」
「……」
なんとなんと、オレが聞かれてしまった。
「オレは、本当だよ」
咄嗟に、そう言ったら。
蒼紫がちょっと眉を顰めて。
「何、オレはって」
「あ」
……つい。言ってしまった。
……だって。蒼紫は。
「――――……だって、蒼紫、女の子、いっぱい付き合ってたじゃん」
「お前より可愛いって思えないって分かったら、別れてたから。だから、人数は多かったかもしんねえけど」
「……」
「――――……言っとくけど、そんな手ぇ出してねえよ? キス位は、してって言われればしてたけど」
「え」
思い切り、びっくりした顔で見上げると。
「えって?」
「――――……全員、してんのかと思ってた」
めちゃくちゃ嫌そうな顔で、蒼紫がオレを見下ろす。
「お前、オレの事なんだと思ってんの」
「――――…何って……エロい……?」
「……お前、ほんとにオレの事、好き?」
嫌そうに聞いてくる蒼紫に。
「…………好き」
自分でもちょっと首を傾げながら、そう言ってしまう。
いや、好きなんだけど……。
……だって。
…………ずっとそうだと思ってきたし。
蒼紫だって、そういう風なノリで、皆としゃべってたじゃん……。
むー、と蒼紫を見上げると。
ちょっとちゃんと話そう、と言って手を引かれて。
ローテーブルの所で座って、水を渡される。
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