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第16話◇

「……だから……噂の全員どころか、ほとんど手、出してないよ」 「……」 「何その顔。信じれない?」 「…………だって、中学から、高校も、そういう話、いっぱいしてたじゃん?」  そう言うと、蒼紫はちょっと困ったみたいな顔をして、視線を落とした。 「……まあ。オレとヤったって嘘つく女も居たみたいだし、オレも毎回、何にもしないで別れたとか言うのもなんか変だから……いいなあ、やり放題でみたいな噂に、適当に反論もしないで、過ごしてたけど」 「……中学ん時の初体験は?」 「……それはほんと。先輩に誘われて、興味あったし。……女の子抱けば、お前の事好きなの無くなるかなって思ってたし。だから、中学ん時の先輩と、その後、もう1人の子と、飽きるまではしてたけど。その後、してないよ」  あまりに意外な言葉に、色んな事が頭に浮かぶ。 「――――付き合ったり、デートしたり、は?」 「まあ……好きになろうとはしてたから。告白されたら、とりあえずオッケイした」 「――――……」 「別に……絶対もうしないとか、思ってた訳じゃねえけど、女とするの飽きて――――……結局、涼のことが好きなままだし。だから、涼より好きな奴が出来ない限り、もういいや、とは思ってた」 「……そう、なんだ……」  ……なんか。  ――――…………嬉しい、かも。  ……誰でも彼でもと、そういう事してたんじゃないって。  …………すごく、嬉しい、かも。 「絶対に、涼の事が好きだなんて、言っちゃダメだと思ってて」 「…………うん。オレも。思ってた。……ていうか……蒼紫がオレのことすきなんて……かけらも思わなかったし…… 超女の子好きで……ていうか、付き合ってた全員としてたって思ってたから」 「ていうか、マジで何なんだよ、それ。さすがに全員って思われてたのはびっくり……」  蒼紫は、む、としかめっ面。 「……じゃあ涼の、初体験は?」 「……いつか。言うかも、だけど。今は言いたくない」 「――――……ん、分かった」 「え」 「なに?」 「……言わなくて良いの?」 「……正直、ムカつきすぎて、聞きたい気分じゃないから。そんなに言いたくないなら、ちょうど良いかも」  そんな風に言う蒼紫に、思わず苦笑い。 「いつか、オレの聞きたいのと、お前の話したいののタイミングがあったら、聞くかも」 「――――……うん」  良かった。  ……あ。でも。今の蒼紫の話だと……。  オレの初めての子と、蒼紫は、してない、かもしれないのかも……?? 「ね、蒼紫」 「ん?」 「……蒼紫が、今までに週刊誌に撮られた子達で……さ」 「ん」 「……そういう事した子は、居るの?」 「居ないって。中学ん時の2人だけ。――――……仕事関係、ほいほいやってたら、面倒じゃんか。誘われて、食事くらいならって事では行ったけど。何で?」 「ううん。……そっか」  あ、良かった。 すっっごく、良かった。  おんなじ子としたとか、すごく嫌な思い出になりそうだったけど、そこは違ったんだ。はー。よかった。  ほくほく喜んでいると。  ぷに、と頬を摘ままれる。 「ん?」 「何そんな嬉しそうなんだ?」 「何でも、ない」  ぷるぷる。  この話は掘り返すとろくなことにならないと思って、オレはぶんぶん首を振った。  と、いうことは。  蒼紫って超エロいとか言われてるけど。  …………2人なの? 経験人数。  じゃーなんでこんなにエロイんだ。  さっきのキスだって、エロ過ぎて。ついてけないし。何なんだ。  ……そっか、飽きるまでしてたって言ってたもんな……。  …………むむ。飽きるまで。むむむ。

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