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第19話◇

 翌朝。  寮の食堂で、朝食を食べてから、登校した。  オレは窓際の一番後ろ。  蒼紫は廊下側の前から3番目。  とりあえず教室を入って、ばらけて、オレは、自分の席に鞄を置いた。 「おっはよー、涼」  前の席から元気に声をかけてくるのは、|宮市 純也《みやいち じゅんや》。職業は、モデル。結構売れてて、こいつも結構忙しい。お互い忙しくてなかなか会えないけれど、気が合って、1年の時から仲が良い。寮に泊りに来たりもするので、蒼紫とも仲良くなってる。 「あれー? 涼、なんか寝不足っぽい顔してるけど。平気? クマできてるよ。珍しいね」 「あー……ちょっとだけね」  オレ、すぐクマに出るんだよなー……。  昨日、そこまでは、遅くなってないのに。  昨日はあの後、蒼紫のベッドで、抱き締められて、眠った。  ちゃんと心の準備が出来てから抱くからと言った蒼紫は、確かにそういう事は、しなかったんだけど。でも、キスしたり抱き締めたり。オレの心臓を乱しに乱して。  ――――……しかも蒼紫は、オレを抱き締めたまま、先に寝ちゃったけど。オレは、なかなか眠れなくて。  腕の中であんまり動けなかったから、何時なのか時計も見れなかったけど、結構眠ったの遅かった、かも。  しかも。  朝起きても。  …………まあ一緒に寝たんだから、当たり前なんだけど。  目覚めた直後に。  この世で一番大好きな人が。  目の前で、オレを見つめてるという。  心臓にめちゃくちゃ悪い、目覚めを迎えてしまって。  朝イチから、強烈すぎて。  急いで、自分の部屋に戻って、顔洗って歯を磨いて、制服を着ていたら。  部屋に入り込んできた蒼紫に、むぎゅー、と抱き締められて。  どうしたの?と聞いたら、とりあえず外出る前に抱き締めておこうと思って、とか、言うし。  結局ちゅうちゅうキスされて、もう。  …………嬉しいやら、恥ずかしいやら。  すでに、朝から、いっぱいいっぱいな訳で。  こてん、と机に突っ伏すと。  純也がクスクス笑った。 「涼たち、今日は仕事ないの?」 「午後から取材とか」 「写真撮影は無いの?」 「あると思うー……」 「じゃあダメじゃん。まあ、メイクで隠せるかな?」 「多分この位なら、バレないから……まあ午後までには目も覚めるし」  はー、とため息をついていると。 「何して寝不足だったの?」 「……何して……?」  ………………蒼紫の腕の中で、ぎゅーて抱き締められてて、とても心臓が寝られる状態じゃなくて、目の前の、カッコ良すぎる寝顔にときめいてたら、結構遅くなっちゃいました。  ――――……とか、言える訳、ない。  うーん…………。  黙って突っ伏していたら、でっかい手がオレの頭を包んで、クシャクシャされた。 「おー、蒼紫、おはよ」 「ん、はよ。 涼、どした?」  頭の上で、純也と蒼紫が喋ってる。……オレの頭撫でてんの、蒼紫か。   「なんか、涼、寝不足っぽいね」 「……寝不足?」  蒼紫の不思議そうな声がするので、仕方なく、ゆっくりと顔を上げた。 「……寝不足なの? 涼」  蒼紫が、あれ?という顔で首を傾げながらオレを見つめる。  まあ。寝不足になるほど遅く寝たわけではないもんね。特に蒼紫は。  その反応も、分かるけど。 「……なかなか、寝付けなかったから、かも……」  嘘が言えず、そう言ったら、純也があははーと笑い出した。 「珍しいなー。オレはいつでもどこでも5秒で寝れるとか言ってるのに」 「まあいつもはほんとにそうなんだけど……昨日は――――……」 「昨日は?」 「……ちょっと嬉しすぎな事が、あって」  つい素直にそう言ったら。  蒼紫が。  ものすごいびっくりした顔で固まって。  オレをマジマジ見つめると。 「痛たっ?」  蒼紫の手が、オレの両頬をぶにぶにっとつまんで。  なんか、捏ねた。 「いたたただた、なに? 何なの?」  騒いでるオレを、純也が大笑いで見てるし。 「あはは、蒼紫、何してんの。すげー面白いんだけど」  ……めっちゃ楽しそうだけど、純也。  その時予鈴のチャイムが鳴って、頬が離された。  む、とした顔で、蒼紫が離れていく。  何なの、もう! 蒼紫ってばっ。  ほっぺがーーー!  と思っていたら、ポケットでスマホが震えた。  まだ先生が来ていないので、ちらと見たら、蒼紫で。  なんだよっと思ったら。 『キスしたくなるから、可愛すぎる事言わないで。かろうじてほっぺ摘まんで耐えたぞ』 「――――………………」  かあっと、知らず、赤くなって。  オレはスマホを閉じて。 ぱたんと、机に、倒れた。

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