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第20話◇

 1時間目の授業が始まった。  さっき蒼紫に引っ張られたほっぺは、なんとか元どおり。  ああ、痛かった。もう。  …………キスしたかったって。  ………………何、それ。  ……やっぱり、嘘みたい。  昨日のあの時間まで。  オレが、初体験の話で口を滑らせるまでは。  蒼紫がオレを好きなんて。思った事も無かった。  女の子が好きで、色んな女の子としてて。  ――――……いいなあ、女の子だったら、オレも1回位、蒼紫と付き合えたかもしれないのになあ、とか、思ったこともあった。  ルックスがカッコイイっていうのは、好きな要素の中に、あるけど。    小さい頃からいつも一緒に居てくれて。  なんか、オレを、守ろうとしてくれてるのが、最初、好きだった。  オレ、小さい頃、人よりすっごく小さかったから。  おっきな蒼紫が、優しくて、オレをチビだとからかう奴らから守ってくれてた。  なんか、もはやオレにとって、王子様的な存在で。  ほんと。  ……カッコよかった。  その内、人並みに背が伸びてくると、チビとは言われなかったけど。  ……今は可愛いとか、イケメンとか。良い意味で言われるけど。  子供の頃は、「お前女みてえだな」とか。言う、デリカシーの無い男子は、結構居た。「スカートが似合うんじゃねえの」とか。からかうような奴も居た。  そん時、蒼紫が言ってくれた言葉が。忘れられない。 「涼は、そんな事言って人を傷つけるお前らなんかより、男らしいしカッコいいぞ」    ――――……もう何度も、思い出してしまう、遠い思い出。  もうなんか。  オレが蒼紫を好きになるのは、当然というか。  ずっと側に居てくれるその雰囲気がそもそも大好きなのに。  守ってくれるし、時には、男らしいとかカッコいいとか、認めてくれて。  とにかく、ずっと蒼紫のテリトリーの中で、オレは生きてきて。  居心地よすぎて。幸せで。  女の子との噂が無ければ……と、思ってたけど。  まあでもそれも、あれだけカッコよければ、そりゃ女子がほっとく訳ないんだから、しょうがないか。と、諦める癖も付いていて。  ……蒼紫を嫌いになる、理由にはならなかった。  ……もうオレほんとに。覚えてる限り、幼稚園の途中から。  ずっと蒼紫が好きだったんだよね……。  …………これ言ったら、引かれるかな……。  うーん……。  さすがに、引かれるかも。  あ、でも恋愛感情を自覚したのは、小5の時だっけ。    蒼紫が、初めて、女の子に告白されて、付き合うって言った時。  学年で知られてる中で、2番目のカップルになった時。  ……めちゃくちゃショックで。  オレの蒼紫なのにって思っちゃって。   好きなんだって思ったんだっけ……。  まあそん時も。  オレ、男の蒼紫が好きなんだって、少なからず大ショックで。  相当悩みはしたけれど。  ……小5も引かれるかな??  ――――……とにかく。人生かけて、ずーっと好きだったのに。  ……そんな蒼紫と、キス、しちゃった。  でもって、一緒のベッドで寝ちゃった。  ……いいんだろうか、本当に。  …………いいのかな。  蒼紫。オレを好きって。言ってくれたし。  いいんだよね。蒼紫とキス、しても。  ――――……いやでも。……ほんとに蒼紫、いいのかな。  ていうか、そもそも、蒼紫て、オレのこといつから……。  うーんうーん。  めちゃくちゃ色んな事を考え続けていたら。  チャイムが鳴ってしまった。  えっ。  1時間目、終わってるし。  オレ、何も、聞いてなかったぞ。  やっば……。  うう。久しぶりに朝から学校に居るのに……。  ちょっと自分に呆れてしまう。  

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