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第21話◇
2時間目との間の休みは、5分休憩。トイレと水飲みしかない。
トイレ行ってこよ……。
立ち上がって、トイレに行き、トイレを済ませてから、手を洗いながら鏡を覗き込む。
なんかオレ。ほんと、ぼーっとしてるなー。
だめだ、こんなんじゃ。
ぎゅ、と目をつむって、ぱち、と開けると。
「何してんの」
すぐ後ろに蒼紫が来ていた。
「わ」
驚いて振り返ると。
「お前、授業聞いてなかっただろ」
「……あ。ばれ、た?」
「なんか、眉間にしわ寄せて、うんうん考えてるのが見えた」
くす、と笑われる。
「何考えてた?」
「……」
トイレの中に誰も居ない事を確認して。
「蒼紫、オレ、のこと……いつから………?」
「――――……そんなこと、考えて、あんな顔してたのか?」
ぷ、と笑われてしまう。
「それだけじゃないけど……」
困ってそう言うと。
蒼紫は、ふ、と笑って、オレを見下ろした。
「会った時から」
「え?」
「幼稚園で初めて会った時から。入園式だな」
「――――……おぼえ、てるの?」
「覚えてる。 他の事は、ほとんど覚えてねーけど。最初、女の子だと思って、可愛くてびっくりしてたら。――――……男で、びっくりした」
「――――……」
「2回びっくりしたからさ。 すっげえ覚えてんの」
クスクス笑う蒼紫。
「それって、でも、その時から……じゃないよね?」
男でびっくりしてるじゃん……。
「その時からだよ。その時から、全部可愛いって思い続けてるから」
「――――……」
「まあ……お前は女の子が好きだと思ってたから、オレもそうしようと、思ってたけど…… でもオレ、ずっと、一番好きだったのは、幼稚園から、お前だよ」
そんな風に囁かれて。固まってしまう。
その時。チャイムが鳴った。
5分休憩は予鈴はないので、これが本鈴。
「やべ。戻ろ、涼」
「う、ん」
トイレのドアを開けた蒼紫について、教室まで急ぐ。
オレ。
幼稚園の途中からしか覚えてないし。
恋愛としては、小5かなあって、思って。
それでも引かれるかなとか、思ってたら。
幼稚園の入園式、って。
――――……なんかもう。
……蒼紫って。なんだかな……。
――――……もっと早く好きだつて、言えば良かった、なあ。
そしたから、もしかしたら、ずっと、そういう意味で、一緒に居られたかもしれない。
けど。
……でも、オレ達。
女の子とも付き合おうとして。
付き合ってみたりも、して。
それでも……お互い、好きだって思えたから、
良かったのかも、知れない、けど。
でもなー……。
蒼紫と、「飽きるまで」してた女の子が居るっていうのがなー。
……良いなー。とか思って。
……いや、違うだろ。良いな、じゃないよね。
…………ていうか。
オレが、これから、蒼紫と。
飽きるまで、するのかな。
…………いや、飽きるまでって。
飽きるのはやだな。
いやいや。
……まだ何もしてないのに、飽きるも何も……。
…………ってオレ、また授業聞いてないし。
やば。
と思って、上向くと。
蒼紫が、オレを見てる事に気付く。
ぷ、と笑われて。 指先で、前向け、と言われる。
うんうん、と頷いて、シャーペンを持ち直して。
そこから、頑張って、授業を聞こうと、してはみた。
かろうじて。聞いた、かな。
……聞くだけは。うん。
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