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第22話◇ずっと*蒼紫side
幼稚園の入園式で初めて見た時。
何て可愛い子なんだと思った。
オレは、ませてて。
この子と「結婚」するんだと、思った。
まあ、結婚が何かもあんまり分かってなかったと思うけど。
そしたら、男だと知って、結婚できない事にショックを受けた。
涼が女だったらよかった。
知り合ってから何回も、そう思った。
顔も声も性格も、全部、好き。
どんだけ居ても、嫌いなところなんて見つからない。
笑った顔、怒った顔、泣いた顔。全部見てきた。
チビ、とからかわれて泣いてた頃は、ほんとに小さくて可愛くて。
ひたすら守らなくちゃと思っていた。
小学生になって、女みたいだと、からかわれていたけれど、あれは涼が可愛すぎて、ただ構いたくて意地悪してるようにしか見えなかったので、それもまた、守ってた。
でも。段々高学年になるにつれ、「チビ」でもなくなり、可愛くはあったけれど、カッコよくもなっていって、からかわれる事は無くなっていた。
まっすぐで素直なところ。
曲がった事が嫌いなところ。
オレは涼のそういう所がすごく好きだった。
小学生によくある、ちょっとした嫌がらせやいじめも、涼はまっすぐぶった切った。
カッコ悪い事、やめろよ!
悪ガキの同級生達に、まっすぐに、そう言い放った。
いい子ちゃんすぎて、疎まれそうな所だけれど、あまりにまっすぐな瞳に負けるのか。涼に悪い感情を持ち続ける事は、誰もできないみたいで。
何度、カッコいいなと、思ったか。
だけど、オレと居る時の普段の涼は、いつも可愛くて。
ちょっと抜けてて。ちょっと甘えてて。
いつもずーっと可愛かった。
なんでこいつ、女じゃないのかな。
こんなにめちゃくちゃ好きなのに。
女だったら……結婚して、ずっと一生守っていくのに。
ずっとそう思ってた。
女と付き合うのが普通だと思っていたから、小学5年の時に告白されてOKして、初めての彼女ができた。さすがに何をするでもなく終わったけれど。
オレは、体の成長が早かったからか、そっちの方も早熟で。
中学の時に先輩と付き合って、初体験を済ませて、しばらくは、その行為にはまってた。
女と付き合って、女とするのが、当たり前なんだと、言い聞かせた。
けれど。
そのうち、それは変化した。
飽きた。というのか。
――――……女としてるのに、相変わらず涼が一番好きな事に変わりはなくて。どうしたらいいんだろうと思いながら、女とする事に疲れて。
しばらく間を置こうと思って、女と抱き合うのはやめた。
それでも、涼より好きになれる子が居るかも知れない、と思って、誘われたり、告白されたら、デートしたりはした。そこは結構、積極的に。
…………なにせ、涼より好きになれる子を見つけたかったから。
デビューの話が不意に舞い込んできた時。
最初は、涼以外の奴とデュオで売り出す事になっていたのだけれど。
無理に、オレが、涼を引っ張り込んだ。
社長にも、音楽の先生にも、涼にも、周り中に無理を言って、チャンスをもらって。涼が頑張ってくれて、形になったら、という了解を得た。
涼、きつかったと思うけど ――――……。
ものすごい、努力してくれて。結果、一緒にデビュー出来た。
もうこれだけで、良い。
男友達なんだから、恋人同士みたいに、別れたり、そんなことも、ない。
仕事仲間にも、なれた。
だから、ずーっと、一緒にいられるんだ。 よかった。
涼と一緒に、仕事をして、一緒に頑張って売れたら、人生ずっと、
共にして行けるんだから、それでいい。
そう思おうとしていた。
なのに。「もう童貞じゃない」と涼が言った時。
てことは。イコール。涼が誰かと、関係を持った。
――――……は????
あ、無理。
――――……涼が、誰かと、キスしたり、
そんな関係を持つとか。
絶対、無理。咄嗟に、そう思ってしまった。
今まで、色々考えてた。
涼に彼女が出来たら祝福してあげよう。そう、思ってた。
なのに。
さあっと全身の血がひいて、冷めて。
絶対無理だと、悟った。
後先考えず、告白、して。
――――……そしたらなんと。
まだ、信じられない気もするけど。
両想い、だったという。
…………もっと早く好きだと言えば良かった。
男女が普通とか、言ってないで。
……もうずっと、こんなに強く、好きだったのに。
は、とため息をついた時。
目の前に涼の顔が、ひょい、と現れた。
「蒼紫、もう智さん、校門に来るって。行こう?」
「ん」
――――……ああ。授業終わってたのか。
涼にちゃんと受けろとか。言えねえな。
クラスの奴らに適当に別れを告げて、教室を出た。
「蒼紫、今寝てた?」
隣から、涼がクスクス笑いながら見上げてくる。
「いや、起きてた」
「ほんとかー? それにしては、めちゃくちゃぼーっとしてたけど」
楽しそうな、笑顔。
「……すごい好きな奴の事、ずっと考えてた」
「え」
ぱ、と見上げられる。
今までだったら。
こんな事言ったら、それは、女の事で。
涼は、今度こそちゃんと好きな奴できたの?とか。言いそうな場面、だったけれど。
じっと涼を見つめていたら。
涼が、かあっと、赤くなった。
あーなんか。
オレの「好きな奴」が、ちゃんと、涼だって事。
少しは、分かってくれてるみたいだなと、実感して。
その反応で。
――――……オレの好きな奴が自分だと思った時に。
照れて、くれるんだなと思ったら。
…………可愛すぎる。
抱き締めたい気持ちを押さえながら。
赤くなった涼の頭に手を置いて、
柔らかい髪を、わしゃわしゃと、撫でた。
今精一杯の、接触。
すると。乱れた髪を少し直しながら。
涼は、ふ、と笑って。
オレを見上げた。
「オレも……今日1日ずっと考えてたかも」
そんな風に言う涼をめちゃくちゃ抱き締めたくて困るけど。
寮に帰るまで我慢。
まあもう、10年以上も我慢してきたし。
帰ったら、めちゃくちゃ可愛がろうと、決めた。
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