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第32話◇

「涼、口、開けて?」  顎に触れた蒼紫に言われるまま、少し口を開けた。 「べー、てして?」  親指が、下唇に触れて。  ほんの少しだけ、中に入りそうな。  なんか、すごく……恥ずかしいんだけど。 「あお、し……」 「ん」  体を起こしてきた蒼紫に、ちゅ、とキスされる。  少し出した舌に、蒼紫の舌が触れて、それだけで、ぞくん、と震える。 「かわい……」  くす、と笑って、蒼紫が言う。  もう、何されるのか……ドキドキの嵐なんだけど……。  後頭部に大きな手が回ってきて。  髪の毛の中に、蒼紫の指が入ってきて。  ぐい、と引き寄せられる。 「……ん」  舌、絡められて、吸われる。 「涼……キス、好き?」 「…… ん、ん、好き……」 「オレの事は?」 「……す、き」  言ったら、すぐ、蒼紫のキスが、深く重なる。 「んン…… ん、ぅ……」  息、くる、し…………。  頭が――――……ぽわぽわする。 「ん……ぅ、ん……」  長く、キスしてると。  熱くて、涙、滲んで。蒼紫の顔が、霞む。 「――――……は……」  さっきまで、下からキスしてた蒼紫は、体を起こして、上からキスしてきてて。そのまま、オレは、ベッドに背を沈めさせられて。  なんか、流れるようにスムーズに、体勢入れ替えられて、上に居る蒼紫に、頬に触れられて上げさせられて――――……唇が、深く、重なってて。 「――――……ん……っふ……」  めちゃくちゃ、愛されてる、みたいなキス。 「――――……あお、し……」 「ン……?」 「……大好き」  蒼紫に回している手に力を込めると。  ふ、と笑って蒼紫は、ちゅ、と頬にキスをした。 「なー、涼」 「ん?」 「たった」 「たっ…………」  何も思わず繰り返そうとした瞬間、その意味に気づいて止まる。 「……っちゃったの?」 「うん。……つか、お前は?」 「う、わわ、ばか……やっ……」  いきなりズボンの上からまさぐられて、蒼紫にしがみついてしまう。 「――――……ん、ちゃんと感じてンな」  くす、と笑われて。キスされて。  手は、確認するとすぐ、離れたけど。 「……っしょうが、ないじゃん」 「んー?」  ちゅ、ちゅと、顔にいっぱいキスされる。 「蒼紫が……いっぱい、キス、するからじゃん」 「ん。悪いなんて言ってないけど? 可愛いし、嬉しい」 「…………っ」  真っ赤になるオレ。  顔も耳も、なんか、全部熱すぎる。 「だってオレのキスに反応してるなんて、もう、可愛すぎだろ……」  んー、と、熱くなってる頬にちゅーちゅーキスしながら、蒼紫が笑う。 「…………っも、はず、かしいから、それ、やめ……」  あまりにちゅーちゅーされて、蒼紫からちょっと逃れようとすると。  その抵抗の手を軽く掴まれて、ふ、と笑われた。 「触ってもいいなら、してあげるけど」 「えっ?」  何を? え、まさか、それを?  ぶるぶるぶるぶる。  首を横にする。 「む、むり、むりむりむり……っ」 「お前どんだけ無理って言うの」  蒼紫はクッと笑い出して、よしよし、と撫でてくる。 「だってオレら、エッチもしようなって言ってるじゃん」 「……っ」 「全部いきなりより、ちょっとずつ段階踏んだ方が良くねえか?」 「……っ……」  ……っこ、心の準備が。 「なに? 必死な顔して」  クスクス笑う蒼紫。 「――――……こ、心の……」 「心の準備?」  うんうん、頷いて見せるけど。 「そんなもん、されながらしろよ」  蒼紫が、ニヤ、と笑って。  えええ、と引いてるオレに、更に笑いながら、キスしてきて。  その、手が、するりと腰に滑った。  びく、と震えると、合わさった唇の間で、蒼紫が笑った。 「どーする? 触ってもいい? だめ?」 「――――……」 「いいだろ……?」  甘い声で、囁かれる。  何でこんな、色っぽく誘うんだろう。  恥ずかしくて、いいとも言えないし、  嫌じゃないから、嫌だともいえない。  もう、目の前の優しい瞳を、じっと見上げるしかできない。

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