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第34話◇

 ――――……とんでもないこと、されてしまった……。  されてしまったと言うか。してもらっちゃったと言うのか。  どっちにしても、恥ずかしいの極致。  もう限りなく、ぼーーーーとしたまま、お風呂から出て、ドライヤーで乾かしてもらって、そのままベッドに連れてこられた。水だけ飲まされた所で、蒼紫は部屋の電気を常夜灯に変えて、そのまま、オレを抱き締めて横になった。  目の前に、蒼紫の胸。 「――――……涼」 「……ん」 「……ずっと喋んないけどさ?」 「――――……うん」 「――――……恥ずかしがってる?」 「……うん」  クスッと笑いながら言われた言葉に頷くと。蒼紫にむぎゅ、と抱き締められる。 「怒ってるんじゃなさそうだから。やっぱそうか」  蒼紫が笑うのが、触れてる所から伝わってきて。  あと、耳元に、クスクス笑う息はかかるし。  ああもう。 「顔見るの、恥ずかしい?」 「……うん」 「じゃあこのまま喋ろうぜ」  このまま。  蒼紫の胸に密着させられたまま。  ――――……それも、十分恥ずかしいのだけれど。  顔見られるよりは、マシか。うん。 「――――……涼」 「……ん?」 「すっげー、可愛かった」 「――――……っ」  また真っ赤になってしまう。  ……顔見られてないから、耐えられるけど。 「ずっと、触りたいって思ってて――――……触ったらどうなるのかなって、思ってたんだよな。オレ」 「――――……」  オレは……むしろ、考えちゃダメだって、思ってたような気がするけど。 「……色々、妄想してた訳。可愛いとこを」 「……………………っ」  ぎゅ、と抱き締めながら、蒼紫ってば、一体何を……。  うわーん、恥ずかしすぎるよー。 「……でも、本物が一番可愛かった」 「――――……」  もう、ほんと、蒼紫。  ……どんな顔で、言ってんだろ……?  恐る恐る動いて、蒼紫を見上げてみる。 「――――……ん?」  まっすぐ、蒼紫を見上げると。  なんかものすごく、優しい顔で見つめ返されて。 「涼?」  ただめちゃくちゃ、愛おしそうに。オレを見つめてくれる。 「蒼紫……」 「ん?」 「……ここ、出たら、その顔で見ないでね」 「え? 何それ」  マジマジ見つめられる。 「……オレ、そんな風に見られて、普通の顔できないから」 「――――……照れて?」 「うん。そう……」 「オレ、そこまで、お前が照れるような顔してる?」  蒼紫は不思議そうにそんな事を言うけれど。 「……してる。オレの事……可愛いなーって、顔……」  言いながら恥ずかしくなってくるけど。  そう言った瞬間、ぷ、と笑った蒼紫に、顎を捕らえられて、まっすぐ見つめられる。 「だって、可愛いからしょうがねえよな……」  ちゅ、とキスされて、そんな風に言われる。 「――――……ね、ほんとに無理。今迄みたいな顔してて」 「今までみたいって?」 「オレに興味なんか、無さそうな顔……女が好きだーみたいな」  そう言うと、蒼紫は面白そうにぷ、と笑った。 「……そんな顔してた?」 「してたよ、今まで」  じ、と見つめると、蒼紫は苦笑い。 「極端なんだよー、蒼紫……とにかくそんな顔で見られたら、オレ、1分で周りにバレるからね……」  オレの言葉に、蒼紫はまたこの上なく、優しい顔で笑って。  それから、すり、と頬を撫でてくる。  

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