34 / 62
第34話◇
――――……とんでもないこと、されてしまった……。
されてしまったと言うか。してもらっちゃったと言うのか。
どっちにしても、恥ずかしいの極致。
もう限りなく、ぼーーーーとしたまま、お風呂から出て、ドライヤーで乾かしてもらって、そのままベッドに連れてこられた。水だけ飲まされた所で、蒼紫は部屋の電気を常夜灯に変えて、そのまま、オレを抱き締めて横になった。
目の前に、蒼紫の胸。
「――――……涼」
「……ん」
「……ずっと喋んないけどさ?」
「――――……うん」
「――――……恥ずかしがってる?」
「……うん」
クスッと笑いながら言われた言葉に頷くと。蒼紫にむぎゅ、と抱き締められる。
「怒ってるんじゃなさそうだから。やっぱそうか」
蒼紫が笑うのが、触れてる所から伝わってきて。
あと、耳元に、クスクス笑う息はかかるし。
ああもう。
「顔見るの、恥ずかしい?」
「……うん」
「じゃあこのまま喋ろうぜ」
このまま。
蒼紫の胸に密着させられたまま。
――――……それも、十分恥ずかしいのだけれど。
顔見られるよりは、マシか。うん。
「――――……涼」
「……ん?」
「すっげー、可愛かった」
「――――……っ」
また真っ赤になってしまう。
……顔見られてないから、耐えられるけど。
「ずっと、触りたいって思ってて――――……触ったらどうなるのかなって、思ってたんだよな。オレ」
「――――……」
オレは……むしろ、考えちゃダメだって、思ってたような気がするけど。
「……色々、妄想してた訳。可愛いとこを」
「……………………っ」
ぎゅ、と抱き締めながら、蒼紫ってば、一体何を……。
うわーん、恥ずかしすぎるよー。
「……でも、本物が一番可愛かった」
「――――……」
もう、ほんと、蒼紫。
……どんな顔で、言ってんだろ……?
恐る恐る動いて、蒼紫を見上げてみる。
「――――……ん?」
まっすぐ、蒼紫を見上げると。
なんかものすごく、優しい顔で見つめ返されて。
「涼?」
ただめちゃくちゃ、愛おしそうに。オレを見つめてくれる。
「蒼紫……」
「ん?」
「……ここ、出たら、その顔で見ないでね」
「え? 何それ」
マジマジ見つめられる。
「……オレ、そんな風に見られて、普通の顔できないから」
「――――……照れて?」
「うん。そう……」
「オレ、そこまで、お前が照れるような顔してる?」
蒼紫は不思議そうにそんな事を言うけれど。
「……してる。オレの事……可愛いなーって、顔……」
言いながら恥ずかしくなってくるけど。
そう言った瞬間、ぷ、と笑った蒼紫に、顎を捕らえられて、まっすぐ見つめられる。
「だって、可愛いからしょうがねえよな……」
ちゅ、とキスされて、そんな風に言われる。
「――――……ね、ほんとに無理。今迄みたいな顔してて」
「今までみたいって?」
「オレに興味なんか、無さそうな顔……女が好きだーみたいな」
そう言うと、蒼紫は面白そうにぷ、と笑った。
「……そんな顔してた?」
「してたよ、今まで」
じ、と見つめると、蒼紫は苦笑い。
「極端なんだよー、蒼紫……とにかくそんな顔で見られたら、オレ、1分で周りにバレるからね……」
オレの言葉に、蒼紫はまたこの上なく、優しい顔で笑って。
それから、すり、と頬を撫でてくる。
ともだちにシェアしよう!