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第35話◇
「大丈夫だよ、涼」
「……?」
「オレ、お前と居られる環境は、無くしたくないから」
「――――……」
「ちゃんと外では気を付ける」
「……うん。お願いします」
そう言ったら、蒼紫は、何それ、と笑う。
「だって、手加減なしで好き好き言われると、オレ……」
「うん」
「……すごい嬉しいから、隠せない」
「――――……つか、そっか。嬉しいのか」
クスクス笑う、蒼紫。
「なあ、涼?」
「……ん?」
「……人が居るとこでは、なるべく今まで通り過ごすけど。にやけてたら、言って」
「――――……言ってって? 蒼紫、にやけてるよって?」
「……言えないか」
「言えないよね……」
2人で、クスクス笑いあってしまう。
「じゃあ合図、決めよう」
「合図―?? にやけてるって、教える合図??」
「そう」
うーん……?
「目くばせするとかは?」
オレが言うと、蒼紫は、マジマジとオレを見つめて。
「涼バカなの?」
と言う。
何それ、失礼な、と思ったら。
「お前見てにやけてんのに、見つめ合ったら、もっとそうなるって」
「――――……」
言葉を失う。
「……わ、かった。じゃあまた別の……」
視線を蒼紫から外しながら辛うじて言うと、蒼紫はクッと笑い出してオレの顔に触れて、まっすぐ見つめ合わせる。
もともと横になったまま向かい合ってて、ただでさえ触れそうに近くに居るのに。
「……ほんと照れるなーお前……」
笑う蒼紫に、ちゅ、とキスされる。
「もう蒼紫、考えてよ、合図。大事だから」
そう言うと、蒼紫は、ぷ、と笑って。
「ああ。んー。何にしよか……あ。じゃあ」
「ん?」
「涼が、指で、ほっぺをちょっと掻く、とかは?」
指でほっぺを掻く、か。
試しに人差し指で、ぽりぽり掻いてみる。
「……こんな微妙なので、気づく??」
「気づくと思う」
「そうかなあ?」
「だってオレがお前を見てにやけてる時ってことだろ。絶対気づくよ」
「じゃあ、それでいい?」
「ん、決まり。お前がそれやったら、オレ、最大限に顔引き締めるから」
何だか嬉しそうに言ってる蒼紫に。
我慢しようと思ったんだけど、しきれなくて、プッと笑ってしまった。
「……まじめにオレ達、何決めてるんだろ」
クスクス笑ってると。
ふ、と笑んでる蒼紫と瞳が合って、にこ、と笑ったら。
蒼紫が不意にオレをぎゅ、と抱き締めた。
「蒼紫……?」
少しだけ腕から出て、蒼紫の顔を見上げると。
「オレ――――……涼が、オレのとこで笑ってれば、それだけでもう、いいなー……」
「――――……」
突然耳に飛び込んできた、甘い声で囁かれる、言葉。
一気に、顔に熱が再集結。
「――――……っ」
恥ずかしすぎだし。
でもなんか、嬉しすぎるし。何も、返せない。
頬に触れられて、見つめてる間に、唇が、触れた。
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