40 / 62
第40話◇
「――――……」
手に触れてるものが、すごく暖かくて、すり寄った。
すり寄った瞬間、ちゃんと目が覚めて、それが蒼紫だって、分かった。
蒼紫って、あったかい……。
体温高いなあ……。
――――……今まで、すごく近くでずっと過ごしてたけど。
これは、知らなかった。
蒼紫が、こんなに暖かいなんて。
こうなって、抱き締められるようになってから、初めて、知った。
……幸せ、だなあ。
……オレって、もしかして、これからずーっと、蒼紫とこうやって、過ごせるの? ふっとそんな事に気付いたら、何だかめちゃくちゃ嬉しくなってしまった。
あ、でもなあ。
と、ちょっと心配になる。
蒼紫が、オレのに触っても、気持ち悪いって思わないでくれたのは分かったし、ほっとしたけど。
――――……まだ最後までしてない。
それがまだ、心に引っかかってる。
……してみて、どうしても無理だったらどうするんだろうって。
――――……好きは好きでも、抱きあうことが出来なかったら。
恋人同士では、居られないのかな。
実は、そこが、すごく心配。
「男同士」て事は、もう、こんなに長い事大好きだから、そんなとこはもう今更気にはしないんだけど。
問題は、体が……受け入れられなかったらどうしようとか。気持ちよくなくて、苦痛だったらほんとにどうしようとか。
……蒼紫の方も、女の子の方がやっぱり良かったってなったら?
お互い大好きなのは、もう今は分かって、幸せなんだけど。
体がだめだったら、どうするんだろう。
顔と性格と一緒に居るのが大好きでも、抱き合うことが出来なかったら……??
他の人としちゃうのかな。
そしたら、こんな風に、抱き合って眠るとかもなくなって……。
……え。めちゃくちゃいやだ。
じわ。と涙が浮かんできてしまった。
ぐす。
息をしようとしたら、鼻が少し音を立てて。
あ。やばい。……トイレ行こう。
そーっと蒼紫の腕の中から抜け出そうとしたら。
ぐい、と掴まれて、引き戻されて。蒼紫に組み敷かれた。
「……涼? 何……風邪ひいた? 寒かった?」
眠そうな声で、蒼紫が言いながらぎゅーと抱き締めてきて。
少ししてから、顔を上げて、オレの顔を見た。
「――――……? 泣いてンの?」
「泣いてないよ……あ、くび……」
蒼紫は、はー、とため息を付いた。
「オレ、お前の嘘、100%分かる気がする……」
蒼紫の指がオレの涙を拭き取った。
「何考えた? 嘘つくんだから、オレの事だろ?」
「……」
「――――……言ってみな」
まっすぐにじっと見つめられる。
心配そうに少し寄る眉。
そんな風に心配そうに見つめてくれると。
胸が、締め付けられるみたいな感覚が、沸き起こる。
ああ。大好きすぎて。
……やっぱりどうしよう、出来なかったら。
うう。
「ああ、何? ウルウルしてねーで話せよ、もう……」
むぎゅ、と抱き締められてしまう。
「なんなの、お前。可愛いんだけど……」
はー、とため息を付かれてしまう。
手は、頭をずっとナデナデしてくれてる。
ともだちにシェアしよう!