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第41話◇
「……蒼紫、バカって言うかも」
「言わないよ」
「……言うと思う」
「言っても、なんでも、お前の事好きだから」
そんな台詞に、それ以上何も出てこなくなって、黙って。
それから、意を決して、話す事にした。
「…………蒼紫とね」
「うん」
「……どうしても、できなかったら――――…… 嫌いになる?」
「できないって何が?」
蒼紫が不思議そうにオレを見つめる。
「…………あの……」
「うん?」
「昨日よりも、もっと、先のこと……」
「――――……ああ。 セックス?」
直だ。
――――……言えなくて濁したのに、ものすごく、直球だ。
狼狽えてると、蒼紫が首を傾げる。
「違うの?」
「……そう、だけど」
「――――……何で言えないの、そんな単語」
「……」
蒼紫は可笑しそうに笑うけど。
……蒼紫の前では特に言えないよ……恥ずかしいじゃんか、好きな人の前って。むしろ何でそんな平気なんだろう。むむ。謎。
「……蒼紫、もしさ、オレか蒼紫のどっちかがさ、無理で出来ないってなったらさ」
「うん」
「……やっぱり、他の人としちゃうよね……」
「――――……はあ???」
少しの沈黙の後、蒼紫は、呆れたように、そんな声を出した。
「それでオレが他の奴としたら、オレ達どーなんの? そのまま付き合えるの?」
「…………」
「別れる事になるよな?」
「――――……うん。多分……てか、蒼紫がそっちの人と付き合うよね……?」
頷くと、蒼紫は、おもいっきりため息をついた。
「はっきり言うからちゃんと聞いとけよ」
「うん」
「別にお前とセックスできなくても、他の奴とはしないし、別れない」
「――――……」
「つかさ、昨日のでも十分。お前が言ってるのは、入れた時に無理かどうかの話だろ?」
「――――……」
「入れるのが全てじゃねーし」
「――――……」
「キスするな、触るなって言われたら、それは無理だけど。言うの?」
「……っ 言わない」
すぐ答えたら。蒼紫は、クスクス笑って。
「じゃあ、絶対別れないし、他の奴の所にはいかない。分かった?」
「――――……うん」
ほんとそれで良いのかなとも思うのだけれど。
絶対別れないし、他の奴の所にはいかないという言葉が、嬉しくて。
……もう。大好きすぎる……。
ぴと。とくっつくと。
笑う蒼紫によしよしされた。
「何かお前、あれこれ余計な心配して、蒼紫いなくなっちゃうの?って、ぴよぴよ泣きながらあとついてくる、ひよこに見えてきた」
ひよこ……。
18の男なのに、ひよこ呼ばわりされてしまった。
大分納得いかない部分はあるのだけれど。
「かわいーなあ、涼……」
ぎゅー、と抱き締められて、幸せなので、もう何も言わず。
抱き付いてしまった。
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