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第42話◇学校で。
「分かってろよ、涼」
「……?」
「別れたくないっていうのは、オレの方が、絶対強いから。覚えといて」
「――――……」
「お前はきっとさ、蒼紫のためにー、とか言って、別れようかなとか諦めようとか言い出すことあるかもしれないって思うけど、オレは諦めないし、たとえお前の為にならなくても、別れないから」
「――――……うん。……ありがと」
「……今のありがとう言うとこ? どっちかといったら、引くとこだろ」
クスクス笑う蒼紫に首を振る。
「オレは余計な事考えちゃうから――――…… 蒼紫がそう言っててくれたら、嬉しい」
「――――……オレはずっと居るから」
「……うん」
そんな会話を朝からいっぱいして。
時間ギリギリまでくっついて。それから準備をして、学校に来たのだけれど。おかげで、今日もオレの頭の中は蒼紫でいっぱい。
数学の色んな記号が頭ん中、素通りして1時間が過ぎた。
でもって、2時間目は古文。……この、意味不明な言葉は……。
これが日本語だったのか。はー、良かった、この頃生きてなくて……。
うーんうーん。なんかもう眠くなってきた……。
ウトウトしながら教科書と戦っていたら。
ふと視線を感じて。そっちを見ると、蒼紫が苦笑いしていた。
2時間目が終わると、蒼紫がまっすぐオレの近くに歩いてきた。
「涼、大丈夫か?」
「何が―?」
「何がじゃねえよ。死ぬほど眠そう」
「……あれは、寝不足とかじゃなくて、いつもだけど古文が……」
「苦手だもんなあ、昔から」
「うん。そーなんだよね……だから、終わったからもう大丈夫」
「まあ、次体育だもんな」
「え」
あ、忘れてた。
道理で、人が少ないと思った。女子はもう隣のクラスに着替えに行ったんだな。
「そうだった! やった!」
喜んで立ち上がってしまう。
「蒼紫、早く着替えよ」
「もう目ぇ覚めた?」
「うんっ」
クスクス笑われて、よしよしされて。
蒼紫と一緒に、体操着を取りに後ろのロッカーに行く。
――――……よしよしとか。蒼紫は前もたまにやってたから。
変に思われるはずはないんだけど。
オレの態度でばれちゃいそうなんだよなー……。
そんな事を思いながら、机の所で着替え始めると、蒼紫が、オレに顔を寄せた。
「お前さー、あんまり見えないように着替えて」
「え?」
周りの皆に聞こえないように、こそ、と囁かれて、蒼紫を見つめると。
「だから、他の奴に裸が見えないように着替えて」
「――――……え、何……」
かあああっと、赤くなって。
「何言って、んの、蒼紫」
「え、分かんない?」
「分かるけど、何で、そんなの――――……今まで何も言わなかったじゃん」
「当たり前だろ。友達でそんな事言ったら、変じゃんか」
……あ、そうか。
「ずっと、言いたかったんだよな。オレ」
「――――……ずっとって……」
「……中学位から? ずっと」
そんな事、改めて言われると、恥ずかしすぎる。
オレは、あんまり裸が見えないように、ばっと着替えた。
「そうそ。あんまり無防備に全部脱ぐなよなー?」
「……じゃあ蒼紫も、そうしてよ」
オレが言うと、蒼紫はきょとん、として、肩を竦めた。
「オレのはどーでもよくねえ?」
「……何で?」
「お前は可愛いから、やなの、見せたくねえの」
「……っんな事言ったって、男しか見ないじゃん」
「そんなの分かってるけど? それでも言ってる」
「――――……っっっ」
蒼紫の目にオレはどう映ってるんだろう。
友達はオレの裸なんか、どーでもいいだろうし。
だめだ。もう。なんかもう。
裸見せないでとか言われるとか、恥ずかしすぎる。
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