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第44話◇
「涼、こっち!」
声がかかって、そっちにパスを送る。
そいつが、シュート。綺麗に決めてくれたそいつと、手を合わせる。
オレはバスケは断然攻める方が得意。
背、そんな高くないから、ゴール下で守ってもあんまり意味がないし。
すばしっこいから、ボールもって切り込んでって、最後、シュートの得意な奴にパスして、決めてもらう。
蒼紫と同じチームなら、絶対蒼紫にパスするんだけど。
蒼紫とペア組むと、気持ち良いんだよなあ、絶対決めてくれるから。
中学の時も、大好きだった、蒼紫とバスケすんの。
懐かしいなあ。今日も同じチームが良かったなあ。
なんて思っていたら。
「ナイス、涼!」
蒼紫の前を通る時、蒼紫の声。振り返ると、ふ、と笑んでくれる。
別チームで、蒼紫をずっと見てられるのも、蒼紫がオレを応援してくれるのもいいなあ、なんて、つい今さっきとまったく違う事を考えるオレ。
……ていうか、何でも良いんだな、蒼紫と絡めれば。
自分にちょっと笑ってしまいながら、ゲーム頑張って、汗を手の甲で拭いながらコートを出たら。
ぽふ、と頭に何かが乗って。
そっちを見ると、蒼紫の笑顔。
「頑張ったな」
頭に乗ったのは、蒼紫のタオル。
「3ポイント、見てろよな」
全国の蒼紫ファンが見たら、悶絶するだろうなというような強気の笑顔で言って。
……ていうか、心の中のオレを悶絶させて。
蒼紫はコートの中に、走って行った。
ちょっと浸りたかったから、クラスメートと、変にならない位、少しだけ離れて、体育館の隅に座る。蒼紫のタオル、くる、と首に巻いて。
――――……蒼紫の好きな、コロンの匂い。
最近、めちゃくちゃ近くでかいでるから。
なんか。
変な気分になりそう。
ていうか。普通。
タオルなんて、貸さないし、借りないよね。
普通、人の汗とか。やだもんね。
――――……って。蒼紫のなら、死ぬほど嬉しくて。
蒼紫の匂い。ちょっとかぎながら。変な気分になりそうとか。
オレ、変態かーーー。わーん。
なんでだかもう、さっきの、カッコ良すぎる笑顔を思い出しながら、タオルにくるまっていたら、もう、心臓がバクバクしてくるし。
はー。もう。むり。
と思いながら、始まったゲームを、ちゃんと見始めたその時。
オレの目の前の、スリーポイントのラインで。
蒼紫がジャンプして。綺麗にボールを、手から飛ばした。
綺麗な弧を描いたボールが、すとん、と、ゴールに吸い込まれて。
女子が隣から、きゃーーー、と悲鳴。
う、わー。
着地した蒼紫が、ゴールを見届けると。
すぐに、オレを見て。ニヤ、と笑った。
つか。
――――……カッコ良すぎるんだけど。
なんなの、蒼紫。
オレを悶絶させすぎて、どーするつもりなの。
ていうか、オレ、今、平然として見せてるけど、もう、ゴロゴロ転がりたい気分だからね。
なんなんだよぅ、もう。
ドキドキが激しいし、顔は熱いし。
蒼紫の匂いがするし。
もーだめだ。
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