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第48話◇
あのまま、お昼を食べ終わって、5時間目に突入。
これが終わったら、智さんが迎えに来てくれてるから、車で移動。
蒼紫と一緒にダンスと歌のレッスンで、オレはその後ギターのレッスン。
今日はずーっとレッスンだなぁ……。
にしても。体育2時間してお昼食べた後の、5時間目が国語って……
眠すぎる……。あと20分か……起きてられるかな……。
と思った瞬間。
目の端に居た蒼紫がオレを振り返った。ん?と顔を見たら、親指を立てて、外を指している。
行こう、と言ってるのが分かって。あれ? 5時間目終わるまでじゃなかったんだ、と慌てて、片付け始めた。
鞄に教科書を入れた時、蒼紫が、「先生、早退します」と立ち上がった。
「あ、オレもです。すみません」と、オレも立ちあがる。
この学校ではこんな事は当たり前にあるので、先生も、「おう、気を付けてな」で済んでしまう。そのまま、さよならーと挨拶し、友達たちと適当に別れながら、蒼紫と教室を出た。
「終わってからじゃなかったんだね。ちょっと早く出てってなってた?」
「いや?」
「……いや?って?」
階段を下りて、一番下の階。理科室や家庭科室がある階。昇降口を通り過ぎて、トイレに引き込まれた。
「蒼紫?」
「――――……来て」
個室に押し込まれて。オレの鞄を取られて、鞄かけに掛けられた。
何したいのかは分かんないけど。とにかくこんな所に二人きり。途端に胸が、ドキドキし始める。
「じ……時間は?」
「チャイム鳴ったらすぐ出よ」
「――――……いけないんだ、授業。サボって」
そう言うと、蒼紫はクスクス笑って、ごめん、と言って。
「約束。今して、涼」
オレの腕を掴んで、すぐ近くで、オレを見つめてくる。
「――――……うん」
究極。ドキドキ、する。
蒼紫の瞳は。もうほんとに。……好きすぎて。視線、外せない。
キス。何度も、もう、してるのに。
めちゃくちゃドキドキして。
ゆっくり、そーっと。そーっと。
唇を、重ねさせた。
……柔らかい。唇。
――――……気持ちいいな。
ちゅ、と。
最後にもう一度唇を寄せてから、そっと離れて。
蒼紫としばらく、無言で見つめ合う。
「――――……」
不意に、ぎゅー、と抱き締められる。
「涼」
「ん」
「……涼」
「うん」
「――――……りょー」
なんか。あまえんぼみたいな蒼紫に。
ふふ、と笑ってしまいながら。うん、と答えると。
「……ほんとは、めちゃくちゃキスして、めちゃくちゃ、気持ちよくさせたい。けど」
「――――……っ」
「……すぐ行かなきゃいけないし。智さんに見せたくないし。……我慢する」
「……う。うん……」
我慢。してください……。
きつく抱きしめられたまま頷いていると。
蒼紫は、んー、と、オレの髪の毛に、頬ですりすりしてきて。
「……めちゃくちゃ好き。あとで、今のキス、またして」
そんな風に言う。
「……うん」
「あ。そうだ」
「ん?」
「……昼、可愛いとか言われてたけど」
「…………あ、うん」
「……オレが一番、お前の事可愛いって思ってるからな」
「――――……」
「分かってる?」
またスリスリ、すり寄られて。
「……ん」
クスクス笑いながら、頷いて。
蒼紫の背にまわしてる手で、ぴと、とくっつく。
――――……蒼紫がこんなに可愛いとか。
こうなるまで、ほんと……知らなかった。
ふふ、と笑ってしまう。
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