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第50話◇

「ていうかほんとにさ、オレは昔からやってたから覚えるの早いけどさ?」 「……ん?」 「蒼紫のダンスは、めちゃくちゃカッコいいんだよね……。オレなんかより、人の目惹くし。ていうか。蒼紫は、ダンスの世界でも生きていけると思うよ。オレは無理だと思うけど、蒼紫はイケると思う」 「――――……ほめ過ぎ」  蒼紫が少し照れたように笑う。 「――――……でもサンキュ」  くしゃくしゃと、髪を撫でられて。 「涼がカッコイイって言ってくれるのが、マジで一番、嬉しい」  じっと見つめられて、ドキッとした所に、先生が戻って来た。 「いける? 蒼紫」  そう言われて。  蒼紫は最後にオレを見て、ふ、と笑うと。 「当然」  言って、立ち上がった。タオル、ぽい、とオレに渡して。 「すぐ覚えてくるから。待ってて」 「――――……ん」  なんかその背中は――――……ほんと自信に溢れて見える。  なんかもう。  ……ほんとカッコいいなあ。 「何。急に動き良くなったけど」  先生が笑いながら蒼紫に言ってる。 「元からですけど」 「あー、はいはい」  ……そんなやりとりを聞きながら。  蒼紫のタオル。膝の上にのっけて、きゅ、と握る。  ――――……オレが褒めると。先生に即バレるくらい、動き良くなっちゃうとか。なんかもう。  ほんと。  可愛い。 ……いや、死ぬほどカッコいいけど。  大好き。蒼紫。  で、結局。蒼紫はそれからすぐダンス、マスターしちゃって。  オレと合わせて、無事、終了。  先生が、蒼紫後半すごく良かったよー、と褒めて帰っていった。  何となく、何も言わず、そのままシャワールームに向かう。  汗を流してから着替えて、椅子に座ってお茶を飲んでると。  蒼紫が、隣に座った。 「……オレ、涼が褒め続けてくれれば、天下取れるかも」  そんな言葉に、あは、と笑ってしまう。 「何の天下とるの?」 「何でも――――……とれそう」 「そっか。……じゃあ、とりあえず、一緒に、歌で天下目指す?」  クスクス笑いながら、そう言うと。 「目指す」 「んーでも、何が天下かって言われると――――……なんだろ??」 「何だろうな」 「新人賞とかは取っちゃったしね。年末の歌番組の、なんとか賞とか目指す?」 「ん。そーするか」  見つめ合って、ふふ、と笑ってしまうと。立ち上がった蒼紫が近づいてきて。  肩に触れられて。そのまま、屈んだ蒼紫に、キスされる。 「――――……」  シャワー浴びたばかりの。濡れた髪の蒼紫は。  すごくなんか色っぽくて。カッコよすぎて。キスされる前から、ドキドキで、倒れそう。  そんな事思いながら、キスを受けていたら。 「……あーもう。可愛くて、たまんねーし。もー、早く終わらせて帰ろうぜ」  触れるだけのキスを離して。蒼紫はそんな事を言う。  そのまま、オレは、ぎゅー、と抱き締められる。  ……オレにとって、蒼紫は死ぬほどカッコよくてやばいのだけど。  どうしてか、蒼紫にとって、オレは、「可愛くてたまんねー」らしい。  不思議だけど。  ――――……ああなんか。  大大大好きな人と、両想いって……。  こんなに、幸せことなんだ……。と。  噛みしめてしまう。  

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