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第57話◇全部
通しで一回、ミスらず弾けて、蒼紫を振り返ったら、パチパチ拍手してくれて、余計嬉しくなる。
「ありがと」
ギターを蒼紫に返して、蒼紫が片付けている間に、ベッドの端に腰かける。
「よかった、一回でもミスらず弾けると、ちょっと安心する」
「そうだよな。オレもダンス、そう思う」
「そっかー。でも蒼紫のダンスは、ミスっても、ミスって思わないけどね」
「そう?」
「アドリブでカッコつけたのかなって思うよ?」
クスクス笑ってそう言うと、蒼紫がオレに近づいてきて。
オレの頬に触れた。
「もう、全部、終わったよな?」
「――――……」
蒼紫の声が……ゆっくりになって。見つめ方が、変わる。
――――……それだけのことで、めちゃくちゃドキドキする。
「うん」
頷くと、ゆっくり唇が重なってくる。
触れて離れてを何度も繰り返して。オレをベッドに倒しながら、蒼紫が乗ってくる。何度も何度もキスされて、その内、舌が、口の中に入ってくる。
「……ん――――……ん、ン……」
気持ちいい。
――――……なんか……ほんと、頭、溶ける……。
「……んふ…………ン……」
なんだか、視線を感じて、うっすら開くと、蒼紫がちょっとキツそうに眉を寄せた。
舌が離れて、抱き寄せられる。
「……涼……」
「――――……ん……?」
はふ、と息を整えながら、蒼紫の肩に、すり寄ると。
「…………最後まで、したい」
「――――……」
「……涼も、できるか気にしてたし……試してみたいだろ?」
そう聞かれて、オレは、うん、と頷いた。
「とりあえず、次の日が休みの日。――――……しような?」
「……いつ、だっけ、休み」
「――――……明日、智さんに聞く」
「……うん」
うわー。ドキドキしすぎなんだけど。……できるのかな。
「そういえば、涼って、どうやってやるのかちゃんと知ってるんだっけ?」
「――――……」
そう言われて、ん? と考える。
「……知ってる?」
「――――……えっと……多分……分かってる……」
多分、知ってるんだけど……それが本当にできるのかは、かなり謎……。
「なんか、調べたこととか、ある?」
「――――……っ」
ぶんぶんぶんと、首を振る。
蒼紫はオレを見て、ふ、と笑って。
「じゃあ全部、オレに任せて」
「――――……蒼紫は、調べたの??」
そう聞くと、んー、まあ……と、蒼紫は苦笑いで頷く。
「痛いとか辛いとかは、絶対しないから」
そんな風に言って、蒼紫がオレの背を枕に沈める。
「とりあえず、ちょっとずつ、色々慣れような?」
そんなことを言いながら、リモコンで小さな明かりにして。
「眠くなるまで、好きにしていい?」
そんな風に囁かれる。
「――――……」
なんかすごくドキドキして、声に出せないけど。
うん、と頷いた。
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