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第61話◇居なかったら。

   もうなんか、心臓が壊れそうなくらいドキドキしながらのシャワータイムを終えてから、蒼紫とベッドに転がった。 「……あのさあ、蒼紫ってさ?」 「うん?」 「…………オレが居なくても、男と付き合ってた?」 「んー……? ……何その質問」  オレを肩にのっけて、抱き寄せてた蒼紫が、じっと覗き込んできて、笑う。 「分かんねーなー……もし涼が居なかったらだろ……んー……オレ、涼を好きになってる時点で、男でもありってことじゃんか。多分」 「……うん」 「でも、涼を忘れるために、男とどうにかなろうとは、考えなかったんだよな、かけらも」 「……うん」 「てことは、今は、涼以外の男には興味がないのかなって思う」 「うん……」 「でも、オレの人生で、涼と会ってなかったらって考えると……もしかしたら、誰か、男を好きになってた可能性は、完全に否定はしないけど……」 「うん」  そこまでは、なるほど、と思いながら、うんうん聞いていたのだけれど。 「でも、涼くらい、可愛くて、良い奴じゃないと、好きになんねえから。きっと、居ないんじゃねえの?」 「――――……」  最後の言葉で、一気に、恥ずかしくなって、顔が熱くなった。  すると、蒼紫が、ふ、と笑って。 「そういう反応、してくれんの、すげー可愛いし」  ぎゅうう、と抱き締められて、頭をなでなでされ続けながら。 「……オレは、多分、蒼紫じゃなかったら、女の子だと思う」 「……それは、何で?」 「……オレ、蒼紫以外の男とは、キスしたり、出来ないと思う……」 「……まあ。そっか」  蒼紫はふーん、と笑ってから。 「……オレらが会ってないって考えても、涼が他の男とキスするとか、絶対無理だから、それでいいや」 「…………え、だって、会ってないっていう話だよ?」 「想像するだけでも無理」 「…………そんなこといったら、蒼紫は、男もあるかもって……」 「え、そんなこと言ってないぞ?」 「…………??」 「涼くらいの奴が居なかったら無理って言ったろ? てことは、無いだろ。ただ、オレにとって、男とか女とかではあんまり差がないかもって話で……」 「……蒼紫って、そう言う感じで行くと、バイって感じ、なのかなあ?」 「…………違うかなあ」 「違うの?」 「……オレは、涼だけ、て感じ……」 「――――……」  …………何だか、めちゃくちゃ瞬きが多くなってしまう。  ……なんかほんと。ずっとずっとずっと、好きだった人に、こんなこと言ってもらえるとか……。 「なんかオレ、全部の運、使ってる気がする……」 「……ん??」  なんだか不思議そうな声を出して、それから少しして、蒼紫がクスッと笑った。 「それくらい嬉しかったってこと?」 「……うん。嬉しいよ。だって……オレ、ずっと……」  ……蒼紫のこと、好きだったもん。  叶うなんて、あの時まで、これっぽっちも思ってなかった。 

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