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第1話:やっぱムリッ!***(3)
今日だけで何回転けそうになったことか!
赤く塗られた口もムズムズするしっ!
もうすぐ舞踏会の時間だけど。
「やっぱムリ! こんなのやってられるか!」
だってこの屋敷の滞在期間は1日だけじゃないんだ。
3日だぜ、3日!
その間ずっと女の格好なんてやってられるかよ!
耐えられなくなって窓にかかっているカーテンそれぞれ4枚をレールから外して結びつける。
テーブルの脚に括り付けて……これでよしっ!
初めはゆっくり慎重に。
やっぱオレ運動神経いいわ!
なんて思ってたら、やばっ!
ひとつ目のカーテンの結び目が解けた。
適当に結んだのが悪かったらしい。
落ちる!!
ぎゅっと目を瞑り、痛みと衝撃に耐えようとするんだけど――。
「あれ?」
痛く、ない?
それどころか力強い腕が背中に回ってる?
そろそろと目を開ければ、そこには薄明かりでもわかるくらいの綺麗な顔をした男の人がオレを見下ろしていたんだ。
「君、大丈夫?」
襟足までの黒髪に高い鼻筋。薄い唇。吸い込まれそうな星空みたいな綺麗な目。
えっと、この人どこかで見たことがあるような……。
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