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「あの時は、勝手に裏切られたような気がしたなあ」
あれから10年。同窓会の席で、俺は口元に笑みを貼り付けながら、ジョッキに入ったビールを飲む。
幸いにして、この場に晶太はいない。風の噂で、数年前に結婚して、晶太の妻の実家に引っ越したと聞いた。今日来られない理由は詳しくは聞いていない。聞くつもりもない。
「えー、毎年チョコくれるって、単なる義理でもないんじゃないですか?告白しなかったなんて、もったいない」
向かい側に座っていた顔だけしか覚えていないクラスメイトが、つまらなそうに口を尖らせる。
同窓会ではよくあるのだが、酒が入ったところで昔話になり、自然な流れで当時の恋愛話になった。そこで俺は、適当に話を振られ、適当に誤魔化しながらも、当時の淡い初恋の記憶を語る。
「まさか。あれに深い意味はなかったんだ。その後、あいつはその相手と付き合うことになった。まあ、くっついたり別れたりは繰り返していたようだが、結局、結婚までいったらしいからな」
笑いながらジョッキを置いたところで、左隣に座っていたクラスメイトの一人が、俺の左手の薬指に触れる。
「じゃあさ、ここに指輪がないのは、未だに……」
俺は追求を避けるようにして、さっと左手をテーブルの下に隠す。
「俺のことはいいだろ。それより、次はお前の話を聞かせろよ。お前こそ、学生時代の武勇伝がわんさかありそうだよな。何だっけ?一人の女に、10回玉砕した話とか」
「うーわ、その話今持ち出す?」
「何それ!俺も聞きたい」
上手く自分から話が逸れたことに、内心息をつきながら、周りに合わせて笑い声を上げ、騒ぐ。
こうして仮面をつけ、本当の気持ちを隠すのも上手くなった。そのくせ、あの時よりもずっと痛みに敏感になり、ちょっとした刺激で傷が疼くようにもなった。
周囲の喧騒が一瞬遠のいた隙に、俺はこっそりと溜息を吐いた。
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