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 俺の言葉を聴いて、先輩は眉を寄せた。 「でも──」  口を開く先輩の言いたいことを、俺は瞬時に察する。  なので俺は、可愛げのない【俺らしい】言葉で、先手を打つ。 「そんなもの、押し当てられたら……っ。こっちも、変な気になるから……っ」  俺の気持ちが、届いたのだろうか。悩んだ末に先輩が、俺のケツから指を引き抜く。  内側にあった異物がなくなって、俺は反射的に肩で息をする。どうやら俺は自分で思っている以上に、緊張しているらしい。体が強張っていたせいで、息も絶え絶えだったようだ。  俺は両腕を自分の顔の上に覆うように置いて、先輩から顔を隠した。  そんな俺を見て緊張をほぐそうとしているのか、先輩が声をかける。……あまりにも【先輩らしい】言葉を。 「僕のは正直、指より全然大きいって自信しかないのだけれど……っ」 「そういうの、いいですから……っ」 「今まで男性も口説きはしたけど、正直男性とのセックスは初めてなんだ。……いや、そもそもこっちを使ってセックスすること自体が初めてなのだけれど……だけど、うん、大丈夫だよ。僕には、性経験と自信だけはあるから」 「そういうのもいいですから……っ!」  ──思わず蹴り上げたくなるようなことしか言えないのか、このピンク先輩は。  それでも、なんとなく緊張がほぐれている。そんな自分があまりにもチョロすぎて、なぜだか無性に恥ずかしい。してやられた、という感覚だ。  いつぞやに噂で聞いた【抱いた女は星の数】は、合っているようだ。  だがしかし、ヤッパリ男は初めてらしい。……それが少し嬉しいのだから、俺はどこまでいってもチョロ男だ。  先ほどまでのちょっと茶化したような声色から一変して、先輩が真剣な声色で囁く。 「──子日君。……挿れるよ」  俺は小さく、腕の下で頷いた。  そして、さっきまで指が入っていたところに……熱いものが、押し当てられる。  それは本来、受け入れるために使わないところを、こじあけるように。……けれどゆっくりと、挿入された。 「あ……っ! は、ぁ……っ!」 「……ッ!」  俺は、圧迫感に。先輩は、想像以上の締め付けになのか。……俺たちはお互いに、呻き声を漏らす。  俺は自分の両手で、自身の両腕を強く握った。 「せっ、ぱ……っ! おっ、きぃ……っ!」 「それは可愛らしい褒め言葉、かな……っ?」 「文句、ですけど……ッ!」  先輩の軽口も、どこか余裕がなさそうだ。  先輩は俺を気遣ってか、無理矢理奥まで突っ込もうとしてこない。それが、助かっているには助かっている。  だが【同じ男】という観点で言うと、申し訳ない気もする。 「せん、ぱ……っ。好きにして……いっ、ですから……っ」 「なにを言っているの……っ」 「俺、だいじょ……ぶ、ですから……っ」  そう言うと、いきなり腕が引っ張られた。俺は自分の顔を腕で隠していたのに、先輩がその腕を引っ張ったのだ。  そのまま先輩は俺の腕を引き、先輩の背中に回すようにする。 「しがみついて、いいから」  ギラギラした目で、こんなに硬くて熱くなるくらい、俺なんかを相手にして興奮しているくせに。……どうしてこの人は、こんなにも優しいのだろう。  先輩は俺を『世界で一番優しい』なんて言っていたけれど、先輩の方が断然……っ。思わずそう、頭の片隅で考えてしまった。

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