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どうして突然、こんなに乱暴なことを。
先輩は乳首を舌先で転がすように舐めたと思ったら、自身のペニスを浅く抜いて、奥まで押し入れて……。その繰り返しを、何度も何度もするのだ。
初めての感覚と同時に、今まで得たことのない快感。
「いぁ、いや……っ! 先輩、やめて……っ! そんなこと、しな──ぁあ、っ!」
まるで、男としての矜持を強引に引き剥がされているような気分だ。顔から火が出そうなほど、恥ずかしい。
先輩は俺の胸に顔を寄せたまま、口角を上げる。
「そう? だけど、ココはもっと触ってほしそうだよ?」
「んぁ、っ! あっ、や……っ! 噛ま、な……や、っ!」
舌先で転がすように舐めていた俺の乳首が、ツンと存在を主張してきたらしい。俺よりも早くそのことに気付いた先輩が、歯を立てて甘噛みしてくる。
痛いのに、それよりも気持ち良くて……っ。腰の奥が、疼いて仕方ない。
触れられてもいないのに、俺のペニスからは先走りの液が溢れた。勿論、先輩がそれに気付かないわけがない。
「もうイきそうなんだ? そんなに気持ちいい?」
そう言う先輩も、限界が近いのだろう。
「子日君が感じてくれていると、凄く興奮する……っ」
先輩の息も、荒くなっている。
そんな先輩を見せ付けられて、冷静になれるはずがない。先輩の背中に回した腕に、俺はそっと力を入れる。
「せん、ぱ……っ。……俺、もう……っ」
精一杯の、意思表示。
先輩の手が、俺の熱に触れた。
先輩は依然として俺の胸に顔を埋めたまま、ポツリと囁く。
「──好きだよ、文一郎」
──突然、先輩が俺の名前を呼んだ。
たった、それだけ。
それなのになぜだか、俺自身もわけが分からず。
──俺の両目からは、涙が溢れ出た。
「う、あ……っ。……あき、つぐ……さん、っ! もう、俺……っ!」
「うん。……僕も、もう……っ」
「あっ、あ……ッ! んっ、あぁッ!」
先輩が俺のペニスを、絶頂に向かわせるために扱く。
それから、壊そうとしているのかってくらい激しく、腰を打ち付けてきた。
堪らず俺は、先輩に強くしがみつく。
そのまま俺は、あられもない声を漏らした。
「──ふあぁ、ッ!」
「……ッ!」
目の奥が、チカチカしているような感覚。
俺は、先輩の手に。
先輩は俺のナカに、お互いの熱を吐き出した。
男となんて、俺には経験がない。本人の発言を信じていいのなら、それは先輩だって同じ。
それなのに、今まで得たことのない充足感で満たされている。
「は……っ。はぁっ、ぁ……っ」
「文一郎……っ」
お互いに肩で息をしながら、強く抱き締め合う。
先輩は俺の耳元に顔を寄せて、囁いた。
「──文一郎。愛しているよ」
ずっと、ほしかった言葉。その言葉を、先輩は心の底からそう思ってくれているのか。
酷く、甘ったるく。
だけど重量感を含めて、先輩が囁いてくれた。
そんな先輩に、まるで誘われるように……。
「──俺も、章二さんを愛していますよ……っ」
なんだか、自分が言うのは恥ずかしい。
けれど、あんなに『伝えてはいけない』と嫌っていた言葉だったはずなのに。いざ口に出すと、不思議と満たされた気持ちになる。
本当に、恋とは厄介で。
……本当に、恋とは仕方のないもののようだ。
8章【先ずは想いを聴かせてくれ】 了
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