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続 4 : 13 微*

 先輩が着ているワイシャツのボタンを外し。上半身を眼前に晒す。 「存外、気分のいいものですね。惚れた男を、脱がすのって」 「君が見たいと願うなら、僕はどこでだって脱がされても構わないよ。『見られて輝く』って、よく言うでしょう?」 「この露出狂め」  晒された先輩の素肌に、手のひらを滑らせる。ここは、気前よく『ウホッ、いい男』とでも言ってやればいいのだろうか。……いや、ちょっと待てよ? 俺がそう言わなくても、この人は『やらないか』といつも言ってきているのだが、それはなぜだろう? 「ヘンタイだからか」 「よく分からないけど、今、この状況に似つかわしくない酷いことを考えていたよねっ?」 「下を脱がしまーす」 「ムードの欠片もない口調だね!」  愚か者め。セックスの導入なんて雑でもいいのだ。  などと心の中で軽口を叩いているのには、当然、理由がある。……こう見えて、俺は緊張しているのだ。  先輩からベルトを引き抜き、スラックスのチャックを下ろす。それから震えないようにと手を叱責しつつ、先輩を脱がして……。 「……っ。なんで、もう反応してるんですか。……先輩の、先輩が」 「シャツのボタンを全開にした文一郎が、僕に抱かれるためだけに僕を脱がしているんだよ? 興奮、するでしょう?」  分からなくも、ない。俺だって、先輩に脱がされると体が熱くなるからな。 「文一郎。後ろ……ちゃんと慣らさないと、さすがに怪我しちゃうよ?」  言葉は、大層紳士的だ。うっかりときめいても仕方ないほどに。  だが、表情がアウトだ。 「顔に、書いてありますよ。『自分で自分のケツを慣らす文一郎が、見てみたい』って」 「あはっ、正解っ。……ねっ、お願いっ?」 「その言葉、便利に遣いすぎです」  そう言われると、断れないじゃないか。  俺は自分の下半身を覆う衣類をサッパリと脱ぎ去り、それから自分の指を、そっと舐める。先輩は俺を見上げて、ニコリと笑った。 「凄くエッチ」 「うるさいですよ」  濡らした指を自分の臀部に這わせると、そこで一瞬、魔法が切れてしまいそうになる。  ……自分で自分のケツを弄るのって、さすがに初めてだぞ。要約すると、怖い。 「……っ」  だが、先輩は期待している。多少の恐怖くらい、ここはなんとか我慢して──。 「──ヤッパリ、チェンジ。僕が文一郎を慣らしたい」  不意に、先輩が口を開いた。  やってしまった、と。後悔のような念が胸を這いずる。 「はっ? なに言って……できますよ、このくらい。自分で、できます」 「そうだね。文一郎は強くて優しい子だから、きっとできちゃうだろうね」 「……っ」 「でも、駄目。ヤッパリ、僕が触りたい」  先輩は俺の手を引き、そのまま俺の手の甲にキスをした。 「自分で触るところは、また今度。今日は、跨ってくれた文一郎を見ているだけで達しちゃいそうだもの。それ以上の刺激的な光景を見せられたら、僕はきっと気絶しちゃうよ」  なんて、うまい口だ。さすが、営業成績トップのエリートだな。  悔しさと、やるせなさ。そうした感情がないと言えば、さすがにそれは嘘になる。  ……だけど。 「本当は、ちょっと怖くて。……だから、その……先輩の指が、いい、です」  甘えてもいいと、言われたようで。  らしくないと分かっていながらも、俺はポツポツと言葉を返した。

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