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続 4.5 : 9

 それから、すぐ。兎田サンが仮眠室に戻ったのを確認して、本当にすぐのこと。 「ウオォ~ッ! 失礼しまァ~すッ!」  オレは社内の通路を全速力で駆け、目当ての人物がいる事務所へと飛び込んだ。  オレとは違い異動はおろか席替えならぬデスク替えもしていない目当ての人物は、当然ながらすぐに見つけられた。  入室によるオレの挨拶は、完全にムシ。オレを振り返る素振りも見せないクールすぎる男に向かって、オレは……。 「──ブゥウンゥウッ!」 「──ガハッ!」  同期兼マイフレンドであるブンの背中に、タックル並みに強力な抱擁をかました。  ブンが『吐血でもしたのでは?』と心配になるほど痛烈な呻き声を上げていたけど、それは一先ずムシだ、ムシ! 「ゆ、きみつ……ッ! なに、して──」 「ブンッ! ブンッ、聴いてくれッ! オレ、オレは、オレは……ッ!」  オレに対して文句を言いたげなブンも、申し訳ないがムシさせてもらう!  細身なブンをギチギチッと強く抱き締めて、オレは叫んだ。 「──おムコに行けないからっておヨメに行くつもりもないからァアッ!」 「──うるっせぇッ! 耳元で叫ぶなッ!」 「──いってェ~ッ!」  容赦のない肘打ちが、オレのか弱い鳩尾にクリティカルヒット! オレのヒットポイントは赤色どころかマイナスだ、マイナス! 今日は痛いことばっかりだな、オイ!  だけど、つまり。鳩尾がこんなにも痛いということは、つまりつまり、これは現実というわけであって?  そもそもケツを床に直撃させられて痛かったということも、残念ながらマジのマジ、大マジで現実だったのだから? 「──ぎゃぁあんッ! 奪われたァ~ッ! ホモはイヤだァアッ!」 「──なら男の俺に抱き着くなバカとらアホみつッ!」 「──竹虎君っ! さすがにちょっと僕の子日君に近すぎるよっ! このままだと僕、ヤ、ヤンデレ化も辞さないからねっ!」 「──アンタも黙ってろバカまるアホつぐッ!」  ──嗚呼、神サマとやら。もしもこの世にマジでおわしますのなら、懺悔を聴いてくださいませです。  ──友の幸福を羨み妬んだこのオレに、どうかホモ展開だけは勘弁してください……ッ!  ……って言うか。 「半年くらい一緒に働いてるんだから、名前くらい憶えておけよォ~ッ!」 「──幸三うるせぇッ!」 「──ギャァーッ! 痛いのヤダァーッ! 現実もヤダァーッ!」  ブンからの強烈な蹴りを受けたオレは、またしても悶絶。どこまでいっても【痛み】によって、オレは今のこの状況が『現実である』と認めざるを得なかったのだった。  ……こうしてオレ、竹虎幸三編ストーリーはドタバタ展開のまま完結。きっともう、オレが主人公の幕間は介入されないはずだぞ! ごめんよ、全国の幸三ファンの子たち!  ブンとの問題も、一件落着! オレのモヤモヤも人に話すことで不本意ながら絶妙にスッキリしてしまったしな! 大団円だよな、ハハハッ!  いやぁ~、良かった良かった! このまま不必要な続きとかが導入されたら、マジでヤバいもんな! ハハハッ、ハハッ! ……はは、は。  ……いやホント、マジで。続きはマジで、勘弁してくれよな! 続 4.5章【先ずは好きだと言わないでくれよな】 了

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