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続 5 : 3
おでんを食べ終えた子日君は、ふぅと一息吐いていた。
「お腹いっぱいです。ちょっと、今は動きたくないですね」
「そうなの? だけど、子日君のお腹はぺたんこのままだよ?」
「腹を触るな、腹を」
と言いつつ、子日君は僕にもたれかかる。
……うっ、可愛い。いつだって子日君は可愛かったけれど、最近の子日君は今までを上回る可愛さを保有している気がする。
「いい場所に背もたれがありますね。温かいですし、俺に楽な姿勢を取らせてくれる。とても優秀な背もたれです」
「勿論っ! 愛する恋人につらい思いはさせたくないからね!」
「腹を触るな、腹を」
あの日。子日君に『触れてほしい』と伝えた日から、子日君は少しずつ僕に触れてくれるようになった。
それはこうして控えめなものだけど、それでも僕にとっては飛び上がってしまいそうなほど嬉しいことなのだ。
ヤッパリ、恋人には甘えられたい。甘やかしてあげたいし、こうして恋人の方から触れ合いを求められたいものだ。自分がここまで貪欲な人間だったことに、驚愕はしてしまうけれど。
「子日君、あーん」
「もう食べるものはないですけど」
「まぁまぁ。……あーん」
「あー……んっ」
素直に口を開いてくれた子日君に、僕はキスをする。子日君は驚いたように体を跳ねさせたけれど、すぐに僕のキスを受け入れてくれた。
「んっ、ん。……章二さん、駄目です。まだ片付けが、終わっていません」
「後で僕がやるから、もう少しだけ」
「そう言って、どうせこのままセックスでもするつもりでしょう。駄目です、片付けが優先です」
「真面目な文一郎も大好きだよ」
「そう言いながらキスをしようとしないでください」
ぺいっと、顔を手で押しのけられてしまう。残念だけど、こうして顔を触られるのも嬉しいから、なにも言えない。
「なんでそんな子犬みたいな顔をするんですか。別に俺、拒否したわけじゃないんですよ? ……シたくないわけじゃ、ないですし」
僕の頬にキスをした子日君は、すぐに立ち上がって片付けを始めてしまった。……あっ、ほっぺ。赤くなってる。
自分からおねだりっぽい言い回しをしてしまったのが恥ずかしいのか、それとも自分からキスをしたのが恥ずかしいのか。もしかしたら両方かな?
「あぁ~っ。僕の文一郎、可愛すぎるっ」
「馬鹿なこと言ってないで、片付けを手伝ってください。誘ったのはそっちでしょうが」
「はぁ~いっ」
そうだった。片付けが終わらないと、セックスはおあずけだ。子日君を抱くためなら、僕は片付けを素早く完遂するぞ。
「子日君、このゴミはこっちにまとめて捨てていいのかな!」
「いいですけど、唐突にやる気が出てきましたね」
「君を抱くためなら火の輪もくぐるよ!」
「嫌なやる気の出し方ですね」
なんて話をしながらも、子日君は僕と片付けをしてくれる。これは、抱かれるために片付けを頑張っ──。
「先輩はそっちのゴミ袋にどうぞ」
「せめて燃えるゴミの袋にしてよ!」
燃えないゴミの袋を手に持ちながら、子日君は僕に冷たい目を向けてくる。うぅっ、冷たい君でも僕は愛しているけどねっ!
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