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オマケ 2 : 4

 なんだこれ、なんだこれ! 僕にしては全然振るっていないジョークじゃないか、馬鹿馬鹿っ、僕のお馬鹿さんっ!  いや、確かに欲しい! エッチじゃなくてもいいから、子日君の写真が欲しいよ! だけどこんな、いくら自称デレ期突入中の子日君だとしてもこのお願いは──。 「──仕方ないですね。では、少々お待ちください」  内心で僕がパニック状態になっていると、突然。あろうことか、子日君が立ち上がったではないか。 「えっ。どっ、どうしたのっ?」 「エッチな写真、欲しいのでしょう? 今、あっちで撮ってきます」 「えぇぇッ! いっ、いいのッ?」  デレ期って、こんなに凄いのっ? 神様、子日様、ありがとう~っ!  ……って、いやいやいや! おかしい、おかしいよっ! あの子日君が僕のためにエッチな写真を撮ってくれるなんてありえない! ヤッパリ子日君はおかしい! おかしいよ!  ──そうとは分かっているのに寝室へ向かう子日君を止めない僕! なんて素直なんだ僕は! うわぁ~いっ、楽しみだよっ!  ソワソワ、ワクワク。結局、僕もただの男というわけだ。善と悪が脳内で戦った結果、貰えるものは貰っちゃえという結論に至ったのだから。完全に悪が勝利している。悪が僕の体を支配しているではないか。ミスター、悪。子日君、ごめんね……!  さて、待つこと数分。突如、僕のスマホが震えた。どうやら子日君が写真を送ってくれたようだ。  素早く、座り方を正座に変更。僕は姿勢を正し、差出人が子日君なメッセージを確認する。  すると、そこには……っ!  ──子日君が、着ているワイシャツのボタンを少し外しただけの。そんな、控えめ以上に控えめな写真が送られていた。  たぶんこれは、日頃の僕がしている姿の真似だ。窮屈な恰好が苦手な僕はワイシャツのボタンを少しだけ外しているのだけれど……えっ?  ──もしかして、子日君って日頃から僕のことを『エッチだな』って思っている。……って、こと? 「どうでしたか、先輩?」  寝室から戻ってきた子日君は、すっかりいつもの恰好だ。ワイシャツのボタンはきちんと、一番上まで閉められている。あまりにも素早い犯行だ。  さて、感想を求められた。僕はスマホの画面に子日君の写真を表示させながら、ギギッとぎこちない動きで実物の子日君を見上げて……。 「──予想未満だったけど期待以上のお写真です……ッ!」 「──どういうことですか、それ」  スマホを両手で握り締めながら、子日君本人を崇めた。  す、すごい! 恋人の自撮りって、こんなにも嬉しいんだ! あぁ~、可愛いっ! 僕の子日君は可愛くて官能的で男らしくてカッコ良くて、もう本当に最高だよっ! 写真を保存して、自宅のパソコンにもメールで送っておこう! ついでに後で、僕の写真も撮って子日君に送ろうかな!  ……って、いやいや! 危うくハッピーエンドみたいな展開にもつれ込みそうになったけど、どうやら理性が遥か彼方から帰ってきてくれたらしい。僕はバッと勢いよく子日君を見上げて、戸惑いを訴える。 「違う、違うよ子日君。あのね、ちょっと待って? 言いたいことは沢山あるのだけれど、先ずはひとついいかな?」 「えぇ、どうぞ」 「もしかして、子日君って日頃から僕を『エッチだな』って思って見ていたのっ?」 「──覗く鎖骨は、官能的ですよね」 「──なんて素直なんだろうっ! デレ期の子日君っ、最高だよ~っ!」  もういいや。もう催眠術とか謎のデレ期とか、もうなんでもいい気がしてきた! 子日君が『デレ期』って言ったから、もうそういうことなんだよ!  僕は素直で可愛い子日君に抱き着こうと、すぐに飛び出す。  ……が。 「──うわっ、危なっ」  なぜか、ヒラリとかわされたではないか。  ……んんっ? 今、子日君はなんて言った? 確かに『危なっ』って言ったよね?  つまり、えっと? ……えっ? 「あっ、あれっ? 子日君、今……あれっ?」 「どうしましたか?」  まるで、なにごともなかったかのように。子日君は怪訝そうに眉を寄せつつ、僕を見下ろしていた。 

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