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オマケ 3 : 5

 食事が進み、酒も進み。三人の顔が、アルコールの摂取によってポポッと赤らみ始めた頃。 「ねぇ、子日君。どうして君は、いつもそんなに可愛いの? 僕はね、子日君。隣に君がいるだけで、いつもドキドキしてしまっているんだよ。今だけじゃない、職場でだってずっと……。もう本当に、勘弁してよ……」 「俺の方こそ、勘弁してください。なにが楽しくて他人の前で恋人に口説かれないといけないんですか」 「あーッ! ブンと牛丸サンがイチャイチャしてるーッ! ダメなんだぞ、ブン! そういうのはコーゼンワイセツって言うんだからなッ!」 「ユキミツのそれは純粋な間違いか? それとも幸三には、俺と先輩がわいせつ物に見えているってことか?」 「あァ? なんだよエキシビショニズムか? それともカンダウリズムか? どっちにしろ、俺様とユキミツを巻き込むなよな。このケダモノ共が」 「一先ず分かっていることは、迷いなく俺若しくは先輩にそんな性的嗜好を断定する兎田主任は悪魔ですよね」  ──究極的に面倒くさい酔っぱらい三人が、こうも簡単に出来上がってしまった。  素面一人に対し、酔っぱらいは三人。しかも全員、妙にクセが強い。  ……えっ? それならいっそ、放置をしてみたらどうかって? それは俺も数分前に一度、考えてはみたのだが……。 「そうだ、ネズミ野郎。口、開けろよ。日頃の礼に、唐揚げを俺様が手ずから食わせてやる」 「ねののっ、ねののっ!」 「牛丸サンが変な鳴き声出してる、ウケる~っ」  放置をすると、こうして三人でよりおかしな方向へと進んでいくのだ。ゆえに、俺がきちんと三人分の手綱を引かなくてはならない。  兎田主任はことある毎に俺と先輩をヘンタイ扱いしようとし、挙句の果てには幸三の気持ちを自分だけに向けさせようと妙な絡み方をしてくる。  対して先輩は、隙あらば俺を口説こうとした。そして逆に、隙あらば兎田主任に虐められているのだ。  一番普段と変わらなさそうに見える幸三だって、口では現状を楽しんでいるものの兎田主任が自分以外にちょっかいをかけると、途端に目から笑いが消える。  嗚呼、面倒くさい。酒を少し飲んだだけで嘔吐をしてしまうほどアルコールに弱い俺は、こういう面も含めて飲み会が苦手なのだ。  ……だけど。そう、だな。 「唐揚げは自分で食べられますよ、兎田主任。だから、先輩。俺は食べさせてもらうつもりなんてありません。それと、幸三。俺は横恋慕なんて趣味は持ってないぞ」  たまには、こんな時間を過ごすのも悪くないか、なんて。そう思えるようになったのは、俺にとって激動の一年があったおかげなのだろう。三人に水を渡しつつ、俺なりにこの一年を振り返った。  同期とより親しくなって、課が違う相手とも仲良くなって、心から『好きだ』と思える相手もできて……。この一年はきっと、俺にとって最も大切な一年のはずだ。  ……いや。そう決めつけるのは、いささか早計かもな。なぜなら、未来のことなんて誰にも分からないのだから。きっと、俺が頼りまくった神とやらにも分かるはずがない。  だから、そうだな。とりあえず、暫定一位というやつで。チビチビと水を飲む三人を見ながら、俺はやれやれとため息を吐いた。  こんなふうに、話していて楽しい相手と時間を共有するのも、悪くはない。  ……まぁ、でも。 「子日君、子日君。水、君の口移しで飲ませてくれないかな? その方がほら、もっとおいしく感じると思うんだよね」 「だったらウシ、俺様が飲ませてやろうか? 口移しなんて気味の悪いことはしねぇが、グラスくらいなら支えてやるよ」 「なんスかその絵面、全然見たくないッスわ~っ。それならワイセツブツをチンレツされた方がまだマシッスよ。ブン、牛丸サンにキスしちゃえ~っ」 「──あぁもう本当にッ! 酔っぱらいの相手ッ、めんどくせぇッ!」  こういうノリは、本気で【たまに】しか嫌だからな!

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