2 / 6

第2話

予約を取ったはいいが、テーブルマナーは、うっかりした。 前菜のテリーヌにすら苦戦する有り様だ。 すーっと、ナイフを入れれば簡単に切れると思ったら下にパイ生地があり、力を入れると「ガチャッ」と、皿にナイフのぶつかる音がする。 彼女の眉間は、その度に静電気が走ったようにバチバチ言っている。 味噌みたいなのが入っている、キャベツみたいなこの葉っぱ、手掴みしてもいいんだよな…?手で取ってパクっと口に入れると、んっんまーい! ほっぺたに手をあてて彼女を見ると、大袈裟なくらい溜め息を吐いて首を振った。 あれ、これも失敗ですか…。 すると、壁の奥の方に座っていた男性が「くっ…」と、笑ったような気がして、左を向くと… わおっ!めっちゃイケメンと驚いた。 シャンパングラスを片手に、俺達とは違う、みるからにもっと高そうな前菜を食べている。 小さなグラスに入ったエメラルドグリーンのソースや、イクラとチーズが乗ったキャビア等、眺めても綺麗でよし、これから食べてもよし… トップは毛先を遊ばせて、残りは地肌が見えない程度に短く刈り上げ、清潔感がある中にも色気を醸し出している。 整ってはいるけど、決して細すぎない眉に意志の強そうな濃いブラウン。真っ直ぐな鼻筋にふっくらとした鼻梁。唇はふっくらと艶めいていて情に厚そうな印象も受ける。 ジャケットスタイルは雑誌に出てくる外国人みたいで、長い足を組んで伸ばすけど少し窮屈そうな印象を受ける。 俺が見つめているのに気がついたのか、ニコッと笑ってからシャンパンを飲む仕草がまた格好いい…。 喉仏が動くのが、すごくセクシーだ。 ふと、向かいの彼女も彼の視線に目を奪われているのが分かった。 付き合ってみて、一度も見たことが無いような、少女のように紅くて可愛い顔をしている。 「どうかした?」と聞くと、誤魔化すように咳払いをして、別に何でも無いわと言われた。

ともだちにシェアしよう!