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第2話
予約を取ったはいいが、テーブルマナーは、うっかりした。
前菜のテリーヌにすら苦戦する有り様だ。
すーっと、ナイフを入れれば簡単に切れると思ったら下にパイ生地があり、力を入れると「ガチャッ」と、皿にナイフのぶつかる音がする。
彼女の眉間は、その度に静電気が走ったようにバチバチ言っている。
味噌みたいなのが入っている、キャベツみたいなこの葉っぱ、手掴みしてもいいんだよな…?手で取ってパクっと口に入れると、んっんまーい!
ほっぺたに手をあてて彼女を見ると、大袈裟なくらい溜め息を吐いて首を振った。
あれ、これも失敗ですか…。
すると、壁の奥の方に座っていた男性が「くっ…」と、笑ったような気がして、左を向くと…
わおっ!めっちゃイケメンと驚いた。
シャンパングラスを片手に、俺達とは違う、みるからにもっと高そうな前菜を食べている。
小さなグラスに入ったエメラルドグリーンのソースや、イクラとチーズが乗ったキャビア等、眺めても綺麗でよし、これから食べてもよし…
トップは毛先を遊ばせて、残りは地肌が見えない程度に短く刈り上げ、清潔感がある中にも色気を醸し出している。
整ってはいるけど、決して細すぎない眉に意志の強そうな濃いブラウン。真っ直ぐな鼻筋にふっくらとした鼻梁。唇はふっくらと艶めいていて情に厚そうな印象も受ける。
ジャケットスタイルは雑誌に出てくる外国人みたいで、長い足を組んで伸ばすけど少し窮屈そうな印象を受ける。
俺が見つめているのに気がついたのか、ニコッと笑ってからシャンパンを飲む仕草がまた格好いい…。
喉仏が動くのが、すごくセクシーだ。
ふと、向かいの彼女も彼の視線に目を奪われているのが分かった。
付き合ってみて、一度も見たことが無いような、少女のように紅くて可愛い顔をしている。
「どうかした?」と聞くと、誤魔化すように咳払いをして、別に何でも無いわと言われた。
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