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第4話
「まずは、この骨と皮を分けてしまおう。」
そういって、俺から皿ごと取り上げた子羊のステーキを丁寧に骨から肉を削ぎ落としてくれる。
ナイフは殆ど音がしない。
「していただくのは、マナー違反ではないのですか?」
俺が聞くと、気持ちよく食事をするのがマナーと言うものだと綺麗な顔で微笑む。
「さぁ、食べてみてくれ。フォークだけでも食べられる筈だ。」
切り分けて貰ったお肉はとても美味しかった。
満足そうに俺の顔を見ながら、さっきまで給仕をしていた店員さんを呼ぶ。
「箸を持ってきてくれないか?」と、聞く。
驚いた、フランス料理で箸を注文するだなんて、いいのだろうか。
給仕さんは、生憎当店はフランス料理でして…とけんもほろほに断ると、その人は困ったように笑いながら、そうかと短く言った。
「ここの総括マネージャーをしている進藤というものを呼んでくれるか。彼の誕生日が近くて会いにきたんだ。」
と、告げた。
給仕は、お呼びしますと礼をして、席を離れた。
「名前を聞いても?俺は西海司 、操(さいかいしみさお)。
名字も、みさおという名前もいいずらいだろうから操を音読みで、ソウとでも呼んでくれ。」
「凄い珍しい名字ですね…俺は田口愁(たぐちしゅう)。しゅうって呼んでください。」
ソウは目を細めて微笑むと
「愁か…イメージにピッタリのいい名だな。もう冬にかかってしまって残念だが、来年はきっと良い秋を迎えられそうだ。」
もう来年の秋って…。
初対面なのに…と、くすりと笑ってしまう。
「笑った顔も、凄くいいな。先程の食事をしている顔よりもだいぶリラックス出来たようで何よりだ。だが、ここでひたすら愁を、口説くのも気恥ずかしいものだな。食事が終わったら、もう少しだけゆっくりと打ち解けられる場所に、移動しないか?」
熱っぽい視線を感じて、俺はどぎまぎしてきた。
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