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第5話

姿勢の整った、品のいい男性がテーブルの前にやってきた。 「操(みさお)さま。当店にお越し戴きまして、ありがとうございます。ふっ、素敵な男性をお連れのようで…クリスマスは一人静かにお過ごしになるのでは、無かったのですか。」 幾分くだけた話し方だが、ソウへの対応を見ると、このお店にとってソウはとても大事な客のようだ。 「さっきまで対応していた店員に、箸を注文したらそのようなものは置いていないと断られた。フランス料理の店だから、とな。この日本で美味しいフランス料理を日本の皆に楽しんで食べて貰いたいシェフと、料理を食べる時は寛いで貰いたい進藤の店だと思って、来ていたのだが。」 進藤と呼ばれた男性は、一瞬目を潜めると、困ったような顔を作り、大変失礼な対応をさせてしまい、申し訳ございませんと謝る。 「この日本でフランス料理をお出しするのですから、そうしたニーズがあれば、店に置いていなくとも走って買いに行くのが当たり前です。お客様をご不快にさせ…」 ソウは謝る進藤さんを制して言葉を続ける。 「行き届かなかったのは進藤の落ち度かも知れないが、客が俺で良かったな。どこかのガイドブックで星をつける車屋の隠密共の前でこれをしたら、危ないところだっただろう?進藤にはこれを渡したくてきただけだから気にするな。」 イタズラッ子のような目でソウが言うと、綺麗な顔が人懐こく可愛くて俺と進藤さんは思わず笑ってしまった。 三人でクスクス笑いながら、進藤さんはプレゼントを受けとると、それではささやかながら、お詫びにと食後のデザートは特別なものを用意してくれた。 それらのサービスはとても気持ちが良くて、デザートまで比較的早く食べ終わる事が出来た。 食後のコーヒーを飲みながら、進藤さんがいかがでしたか?とテーブルに来る。 「すごく、美味しかったですっ!ありがとうございます。」 俺が言うと、ソウも満足そうに口角をあげる。 「愁はさっき、ここで彼女と食事をしていたのだが…俺はこれから愁を口説きたいと思ってな。進藤、何か愁を落とす、いいアイデアはないか?」

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