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だいきらい
それからは、一緒にいる時間がより増えた。
「お母さんが『ふたりは似てない双子ね』って言うんだよ」
篤史が母親の声音を真似して笑う。
なるほど、双子というのは的を射ている。
篤史と自分は、別々の存在じゃない。元々ひとつだったものがふたつに別れたのだと言われたほうが、しっくりくる。
そう考えるとき、喉には相変わらず「ひっかきたいなにか」がつかえたままだった。
それは、掴めそうで掴めないということ以外は、どこか温かいような気もする、不思議なものだ。
正体は相変わらずわからないまま、月日が流れる。
そして、十歳のその日は来た。
いつものように篤史を迎えに行った。昨日は家の用事があるとかで遊べなかったから、今日会えるのが待ち遠しくて。
篤史はのそのそと玄関に出てきた。いつもなら、やたら愛想のいい大型犬みたいに駆け寄ってくるのに。
そして、開口一番こう言い放った。
「もうほたるんとは遊ばない」
どうして?
戸惑う蛍に、篤史は面を上げた。一瞬、強い憎悪のような鈍い光を感じた。いつも穏やかな篤史の表情からは、想像もつかないような。
「……い」
「え?」
「ほたるんのこと、大嫌いだから!」
喉につかえていた〈なにか〉が、ぱりんと砕け散った気がした。
それから蛍は、三日寝込んだ。年齢より大人びたところのある蛍が幼児帰りしたようにぐずって泣きながら寝込む様子に、両親はおろおろするばかりだった。
やっと熱がひいて起き上がれるようになったのは一週間後。
篤史は、いなくなっていた。
両親の転勤で、一家ごと引っ越したのだという。彼らの去ったあとには、がらんとした空き家だけが残されていた。
鎖骨と鎖骨の間のくぼみには、あの日砕け散ったなにかの残滓。
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