2 / 5

第2話

「なぁ、じゃあ、どんな話だったかだけでも……!!」  水坂は原稿を墨野から遠ざける為に、鍵のかかる金庫に押し込むと、鍵をかける。  大学時代からどんな駄作だからと言っていた作品も墨野にだけは見せていただけに、墨野としても、気にならない訳はない。 「まさか不倫の話とか離婚の話か?」  墨野が水坂にそんな風に聞いたのは墨野が正しく、数日前に不倫を理由に離婚したからだった。 「そうだな。奥さんが不倫して、旦那に離婚を迫られて、奥さんは別れたくないから毒を盛るって話だよ」  墨野が不倫した……のではなく、墨野の奥さんが不倫をして、不倫相手と一緒になりたいからという理由で、墨野は離婚を承諾していた。 「まぁ、俺も奥さんと一緒にいるよりはお前といる方がストレスなかったんだよな」  まず、食べものの好みが違うのは結構、辛かったのだと墨野は力説する。あとは、映画の趣味や休日の過ごし方……ただ違っているだけならいざ知らず、干渉し合ったり、非難し合ったりすれば、人間関係など、容易く壊れてしまうらしい。  一応、不倫は奥さんの方が先にしたのだが、墨野としても、この辺りで潮時だと思っていたのだという。 「って、やめやめ。俺には恋愛はさておき、結婚は向かなかったんだ」  気ままな独身生活に戻り、墨野は「慰めて欲しい」と水坂に泣きつき、大学時代の時のように適当な店で酒を飲む。そして、これも大学時代の時のように水坂のアパートに転がり込んできた。 「そう言えば、お前、彼女は?」  思い出したように、墨野が言うと、水坂は少し慌てて「今はいないよ」と答える。  墨野が結婚した時、これもつい、やけになって、『今、つきあっている彼女がいる』なんて水坂は言ってしまったが、そんなものはいない。  水坂が好きなのは今も昔も、自分の目の前で酔っ払っている男だけだったのだから。

ともだちにシェアしよう!